緊急事態宣言「発出」、不思議な日本語 金田一秀穂さん

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聞き手・興野優平
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 緊急事態宣言を発出する――。なんとも物々しい言い方が、政府やメディアで頻繁に使われています。非常時のこうした言葉遣いの背後に何があるのでしょう。日本語学者で杏林大学教授の金田一秀穂さんに聞くと、日本語は緊急事態には向いていない言葉ではないか、と言います。なぜでしょうか。

 ――「緊急事態宣言を発出」といわれると、よくわからなくなる。「緊急事態を宣言する」ならわかるが、緊急事態なのか、緊急事態だということにしたいのか。「発出」と言う言葉も聞き慣れない。

 僕も昨年4月に緊急事態宣言が出た時、「なんなんだ、この発出という言葉は」と思った。「発令する」が普通の言い方。重々しく言いたかったのだろうという気がする。

 それから、「緊急事態だ」と言えば良いはずなのに、「緊急事態宣言を~する」、とワンクッションある言い方をする。宣言というものが、とても偉いもののように聞こえてしまう。選手宣誓の「宣誓」のように、そういう言葉は非日常のものだ。

 記事の後半では、政治家が会食をやめられない理由にもつながる、日本語の特徴が語られます。

 言語行為論では、何かを言う…

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この記事を書いた人
興野優平
広島総局|県政担当
専門・関心分野
文芸、核、人口減少、ジェンダー

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