「金権政治、おさらばだ」 運動費10万円で戦った候補
10万円で選挙を戦ってみせる。「政治とカネ」が問われた参院広島選挙区の再選挙に、そう宣言して立候補した候補がいる。街頭演説はせず、都市部は回らない。組織戦とは対極にある選挙運動に同行して見えたものとは――。
再選挙が告示された4月8日、元会社員の大山宏さん(72)は無所属での立候補の届け出を済ませると、報道陣の取材に応じた。「(ビラを)できる限り貼り歩くことを選挙運動にする」。そして、再選挙の原因となった買収事件に触れ、言った。「10万円でそこそこ戦えたら、金権政治とおさらばできる」
大山さんが政治に関心を抱いたのは、母の介護問題がきっかけだ。高齢者施設への入居を待つ人が多いと知り、福祉行政を改革したいと考えた。そんな時、再選挙の実施が決まった。
選挙運動に使う費用の一部は、公費で負担される。選挙用ポスターなら今回、1枚の上限は97円で最大1万6302枚分が対象となる。だが、買収事件による再選挙で多くの税金が使われることに疑問を感じ、新型コロナ対策として政府から昨年給付された10万円だけを充てようと思い付いたという。
ビラは自宅のプリンターで印刷した。政策で判断してもらおうと、公約を記し、顔写真も載せない。画びょうなども含め1枚10円に満たないという。8151カ所ある再選挙の全掲示場に貼ったとしても、10万円を下回る計算だ。
山間部や島々を中心に回り…