「父さん飲もうか」 気付けなかった高2の息子のSOS

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大野晴香 志村英司
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 「もうだめだ」

 長男はつぶやき、涙をこぼした。

 その5年後、長男は逝ってしまった。父は、生きてて欲しかったという想いと、ある後悔を、15年経った今も抱えている。

 木下宏明さん(67)=岐阜県土岐市=は15年前、長男を自殺で亡くした。高校2年生になったばかりの一人息子だった。

 小学6年生のころ、上履きを隠されたり、自転車を壊されたりするいじめに遭った。妻の自死がきっかけだった。卒業する頃、長男は「もうだめだ」とつぶやき、涙をこぼした。

 中学時代は不登校だったが、家庭教師をつけてなんとか高校に進むと、欠席することなく登校していた。

 卓球部を立ち上げ、文化祭にも参加。前向きに高校生活を送っているようだった。「僕、頑張れるかも」と口にしていた。

 母を亡くし、いじめられた心の傷から、立ち直ってくれたと木下さんは思った。かねて挑戦してみたかった発達障害者支援の活動に取り組み始めた。

 高校2年になった4月、「お父さん、酒飲もうか」と声をかけてきた。「何を言っているんだ。未成年が酒なんか飲めるわけないだろ」と答えると、「そっか、そうだよね」。翌日、長男は学校へ出かけ、帰ってこなかった。妻が自死したのと同じ始業式の日の朝だった。

 警察に捜索願を出した。まも…

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