甲子園に通算14回、監督として出場し、全国準優勝を2回果たした元高校野球指導者の三原新二郎さん(81)=広島市中区=はいま、広島文化学園大の野球部監督として奮闘している。臨機応変な選手采配が「三原マジック」と呼ばれ、野球ファンを沸かせてきた名将だ。だが、広島で被爆したという生い立ちはあまり知られていない。メディアでは野球の話題が大半を占めるためだが、自身もあまり積極的には語ってこなかった。
ところが、今年の夏は少し違った。8月5日夕、広島県呉市の広島文化学園大の球場で、練習を終えた約80人の部員たちを集めて被爆体験を話し、こう求めた。
「明日午前8時15分に黙禱(もくとう)をしような」
部員たちは静かに耳を傾けた…