深夜0時、渡辺明名人は2度繰り返した「誰もが指せる将棋ではない」
渡辺明名人(37)=棋王と合わせ二冠=に斎藤慎太郎八段(29)が挑戦している第80期将棋名人戦七番勝負第2局(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛、ダイトクコーポレーション、滝亭協力)は19、20の両日、金沢市の「金沢犀川(さいがわ)温泉川端の湯宿・滝亭」で指され、渡辺名人が勝利してシリーズ2連勝となった。急がず、揺るがない「名人の将棋」での完勝譜だった。
印象的な瞬間がある。
1日目の昼食休憩を終え、自室から離れの対局室に戻るために屋外に出た渡辺は、庭園から望む滝の流れを見つめた。わずか3秒程度だったが、見とれるような視線を送っていた。大勝負の渦中にある棋士として珍しいシーンだった。「川のせせらぎしか聞こえない対局室はありがたかったです。滝とか温泉も」
渡辺先勝で迎えた第2局。名人は盤上でもゆったりと構え、悠然と挑戦者を迎え撃った。斎藤の戦型選択は角換わり早繰り銀。先手を持って過去2局しか採用していない作戦を大舞台で投入した。斎藤は「3月のA級順位戦で糸谷(哲郎)さんと指す前の研究で先手に鉱脈を見つけたので、指してみようと思ったんです」と意図を明かす。「名人の予想にもなかったのでは」
北野新太記者が終局後、渡辺明名人に取材しました。印象的な「名人の言葉」から、対局を振り返ります。
実際、名人の予想からは外れ…
- 【視点】
斎藤慎太郎挑戦者が採用した作戦は角換わり早繰り銀でした。渡辺明名人にとって、やや意外な戦型だったと思います。それでも渡辺明名人には「△6五歩」という用意の作戦がありました。この手が勝因になったわけではないと思いますが、斎藤挑戦者の予定が狂っ
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