竜王に挑んだ広瀬章人の告白 「藤井聡太さんの力と順位戦の夢」

有料記事純情順位戦 ―将棋の棋士のものがたり―

北野新太
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 クリスマス目前。店内には華やいだ歌が流れ続けていた。

 今月13日夕方。将棋の竜王戦七番勝負の第7局が実施されていれば、広瀬章人甲府市の常磐ホテルにいて、前日の対局場検分で藤井聡太と盤を挟み、駒の感触を確かめている頃だった。

 けれども現実は最終局に至らずに敗退していた。厳かな和服姿ではなく、リラックスした私服姿の広瀬は自宅近くのスターバックスコーヒーで私とテーブルを挟み、朗らかな顔でラテを飲んでいる。

 最初に尋ねたいことがあった。敗れ去った翌々日、広瀬がブログに書いた言葉がどうしても気になっていた。

 《シリーズが終わって少し時間が経ちましたが、色々な感情が織り交ざって今までに感じたことのない不思議な心境になっています。今後取材などあるかもしれないので多くは語りませんが、一つ言えることは第3局を落としてしまったことはあまりにも痛かったです。結果的にこの成績がもろに影響してしまいましたが、それも含めて今の実力なので仕方なかったと思います》

 今月3日、第35期竜王戦七番勝負は藤井聡太竜王(20)が広瀬章人八段(35)の挑戦を4勝2敗で退け、幕を閉じた。若き五冠がタイトル戦での不敗神話を継続した一方、称賛されたのは挑戦者の戦い。周到な事前研究により、攻略に成功した対局も。残ったのは手応えか、後悔か。挑戦を終えた今の心境を聞いた。

 ――「色々な感情」とはどんな感情なのでしょうか。「多くは語りませんが」の「多く」を今こそ語って下さい。

 「まず、シリーズが終わって…

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この記事を書いた人
北野新太
文化部|囲碁将棋担当
専門・関心分野
囲碁将棋