挑み続ける人の信条 女流四冠・里見香奈、棋士編入試験へ

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北野新太
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 もう8年も前のことになるが、あの言葉の輝きは今も胸の中にある。

 新幹線の車中でのこと。窓の外は雪景色だった。

 私は隣席の里見香奈に聞いた。

 「里見さんには将棋を指す上での闘志ってあるんですか?」

 当時、将棋の棋士を取材する時に必ず尋ねていた。誰もが少し考え込む質問だったが、里見は朗らかに即答した。

 「あります。すごいあります。闘志はいらないって感覚が私には信じられないです。盤を挟んでしまったら、絶対負けないっと思って戦います。私から闘志を取ったら何も残らないです。本当に何も」

 2014年2月、里見はまだ21歳だった。棋士養成機関「奨励会」の最高段である三段に昇り、夢を手にするための最後の挑戦を始めようとしていた。「闘志を取ったら何も残らない」。きらきら光るセリフだった。そんなふうに語る棋士は他に誰もいなかった。

里見香奈女流四冠が棋士編入試験の受験を決断した。挑み続けてきた人が再び大きな挑戦を始める。なぜ挑むのか。過去の取材の中で必ず語ってきた言葉がある。

 「出雲のイナズマ」と呼ばれ…

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この記事を書いた人
北野新太
文化部|囲碁将棋担当
専門・関心分野
囲碁将棋