第4回経験なし研修なし、勉強は「ユーチューブ」 派遣職員が見た人手不足
A-stories「ケアワーカーがいなくなる?」
大阪市内に住む女性(54)は、半年ほど続けた「派遣の介護職員」という働き方を、この1月でやめることにした。
介護の仕事をした経験はなかった。資格もない。
新型コロナの影響で、委託契約で働いていた前の職場が縮小され、契約終了を言い渡された。亡き父が訪問介護を利用したことから介護の仕事に関心はあり、派遣会社に登録すれば仕事が見つかりやすいだろうと考えた。
昨年6月。登録して1週間後、すぐに仕事が決まった。
派遣先は、同市内にあるデイサービスセンターだった。午前9時から午後5時まで、時給は1200円という契約だ。
通ってくる高齢者30人ほどの食事や入浴などの介助が女性の仕事だった。
しかし、研修も何もないままに、いきなり業務が始まった。
「人手不足は想像以上。正職員たちはいまの状況に疑問を感じる余裕さえ持てず、目の前の業務に追われる現実を痛感しました」
介護のやり方を正職員に尋ねると、「ユーチューブを見て」。血圧測定、ベッドから車いすへの移乗、排泄(はいせつ)や食事の介助……。正職員の様子をまね、ユーチューブで動画を見て勉強した。
「褥瘡(じょくそう)」「臥床(がしょう)」「食介(しょっかい)」……。聞き慣れない用語が飛び交う。ネットで調べてようやく理解できた。
歓迎ムードなし、感じた「ゆがんだやりがい」
「歓迎されるのかと思っていたのですけど」。介護の現場は人手不足だと聞いていたからだ。しかし、「歓迎ムード」はまるで感じなかったという。
同じころに、ほかにも2人の派遣職員が働き始めた。「忙しいのに新人3人なんてどうするの!という雰囲気で、私たちは『お荷物状態』からの出発でした」
職員の「ゆがんだやりがい」を感じたこともある。
常時職場にいる職員は、派遣…
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- 【視点】
「『派遣には何も期待されていない』と感じた」。記事にある派遣の介護職員として働いてきた女性の言葉です。 厳しい人手不足に加えて、雇用形態の違い、時給の違いなどが介護現場の空気に複雑に影響しているのだと思います。 もう十数年前ですが
…続きを読む