舞台で花開く栗原類、新作は掃除機役 発達障害とともに生きる俳優魂

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聞き手・西本ゆか
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 ルネサンス期の画家ラファエロを思わせる容貌(ようぼう)とは裏腹に、口を開けば「ネガティブすぎる」モデルとして話題を集めたのが17歳の時。それから11年、栗原類さん(28)は多くの舞台に出演し、俳優としての実績も積み重ねてきた。

 2015年に公表した発達障害のADD(注意欠陥障害)で、短期記憶に困難を感じつつ歩んだ一発勝負の演劇の道は、容易ではなかったに違いない。だが「舞台は楽しい。学んだすべてが永遠の財産になるから」。KAAT神奈川芸術劇場横浜市)で22日まで上演中の舞台「掃除機」で、家族のグチを吸い込む「掃除機」役に挑む栗原さんに、実はネガティブどころか「超ポジティブ」な俳優人生への向き合い方を聞いた。

 ――チェルフィッチュ主宰の岡田利規さん作「掃除機」は、80代の父と引きこもりの50代娘、無職の40代息子の崩壊寸前の日常を、掃除機デメの視点で描く。「家電」役は初めてですか

 動物や魔族など、舞台で人ならぬ役を演じることが、同世代の俳優の中でも僕はずば抜けて多かった。それでも掃除機を演じる日がくるとは、全くイメージしていませんでした。

 モノだから、最初は無機質に演じようと考えたけど、稽古を重ねるうちに「王道過ぎてつまらない」と感じて。今思うのは、感情をある程度出しつつも生々しさを消した「人間ぽくない芝居」。舞台の上で、違和感と同時に掃除機としての説得力を持つ、明らかに人間ではない存在になれたらと思います。

 掃除機のデメは、意思の疎通がない家族の「大きな独り言」を吸い込む。いわばカウンセラーだけど、モノだから意見を返すでもなく、純粋に聞くだけ。それでいいんです。心にためず話すことで人は解放され、家族のバランスも保たれる。その大切さは、コロナ禍でつくづく感じましたから。

人ごとではない8050問題

 ――80代の親が50代の引きこもりの子を世話する「8050問題」は社会的な課題。発達障害が背景となることもあります

 笑えないことに、僕が50代になるころ母親は80代。軽い答えと思われそうですが、自分のためにも、まずは「結婚したいな、ひとり立ちしたいな」と思っています。一番大きな問題は、引きこもりだけではなく「心の問題」ではないかと思うんです。

 「掃除機」に登場する引きこもりの50代の娘は、悩みをはき出せる友達がいなかった。僕もコロナ禍で、やっぱりためちゃうって駄目だな、と再認識した。僕は「悩みがたまってるな」と思ったら即、周りの人たちに吐き出します。相手は親だったり主治医だったり、たまにマネジャーさんだったり様々ですが、それは、それぞれの人にしか話せない悩みもあるからです。自分の心を維持するためにも、たまってるな、イライラするな、と思ったら、他人に話すことが大切だと思います。

悩みを話す羞恥心は捨てるべき

 ――日本では他人に悩みを話すことを「恥」と感じる人も少なくありません

 確かに、日本では悩みを打ち…

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この記事を書いた人
西本ゆか
文化部
専門・関心分野
演劇、サブカル(主にマンガとアニメ、推し活)、食と酒 温泉、動植物