【そもそも解説】ChatGPT、驚きの会話力がもたらす未来と死角
無料で誰でも使える対話型の人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」は、何がすごくて、死角はどこにあるのか。
チャットGPTは米スタートアップ企業「オープンAI」が手がける対話型AIだ。
昨年11月の公開から2カ月でユーザーが1億人を超え、「史上最速で普及したアプリ」とも言われる。
主な開発対象である英語だけでなく、日本語も日常会話でやりとりができる。これまでのAIチャットより長い文章や、質問を何回か重ねた際にも、流れを踏まえて回答してくれる。言葉遣いも自然な日本語に近い。
「まるで人と会話していると錯覚する精度まで来た」。AI研究者の川村秀憲・北海道大学教授はそう意義を語る。
AI研究はもともと、ドラえもんのように、コンピューターに人間の知能を持たせたり、人間が知能を使って行う分析や判断を、機械にさせたりすることを目指す分野だ。
1956年、米国の研究発表会で初めて「人工知能」という言葉が使われた。50年代の第1次ブーム、80年代の第2次ブームを経て、現在は2010年代に始まった第3次ブームとされる。
近年の進歩を呼んだ技術が、人間の脳神経のつながりをまねた「ニューラルネットワーク」と、「ディープラーニング(深層学習、DL)」と呼ばれる訓練方法だ。
多層の神経のつながりを模した計算方法を使い、大量のデータを使ってAIが自ら能力を習得して、精度を高めていく手法を指す。たとえば、人間が「ネコだ」「イヌだ」と見分けられるように、画像の中のどこに着目すればネコやイヌといった判断がくだせるのかを自ら学ぶ、ということだ。
12年、米グーグルのチームが、ウェブ上の膨大な画像をAIに任せて仕分けさせたところ、「ネコ」の特徴を発見した。事前にはネコという言葉も、サンプル画像も与えずに、AIが自らネコの特徴を見つけ出したことで、大きな飛躍として注目された。
17年には同じくグーグル傘下企業のAI「アルファ碁」が、当時の囲碁の最強棋士に勝利。お手本となる棋譜を大量にDLで学んだ上に、囲碁AI同士で対局を重ね、どうすれば勝てるかをAIが自身で学ぶ「強化学習」という手法でも注目を集めた。
誤りが起きやすいケースは
こうした技術の延長上で22年は世界を驚かせるサービスが次々に登場した。
「チャットGPT」の会話力は、計算量の大きい巨大なモデルを使い、インターネット上で集めた大量の文章で訓練をしていることや、「トランスフォーマー」と呼ばれる新しいDL方式を採用したことで実現されたと考えられている。
文章としてより適切な単語を計算ではじき出す「先読み」の能力や、長い文章を記憶し、文脈を理解して回答する能力が飛躍的に高まった。人間との対話に特化した強化学習も経て、より自然な受け答えもできるようになった。
自らもAIの研究と開発に取り組む平嶋洋一・大阪工業大学教授は「技術としてはこれまでの組み合わせだが、AIに触れる機会がなかった多くの人が、気軽に『使ってみよう』と手に取ったことが、チャットGPTのもたらした最大の成果だろう」。
ただ、現状のチャットGPT…
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