「27歳実家暮らしはヤバいよね」マッチングアプリやめた男性の後悔

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椎木慎太郎
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 「操作が長時間なされていませんが、大丈夫ですか」

 インターホン越しにオペレーターの女性から声を掛けられ、男性(28)は我に返った。腕時計を見ると、消費者金融の無人店舗に入って1時間が経っていた。入り口の外には1カ月前に知り合った女が見張っているので、逃げられない。出会った時は、こんなことになるとは予想もしていなかった。

初めてのマッチングアプリ、高鳴る胸と抑えきれない気持ち

 昨年5月、初めてマッチングアプリの会員になった。交際相手が欲しいと思っていたが、職場の介護施設では出会いがなかった。マッチングアプリで知り合った女性との交際が続いている友人もいる。悪い印象はなかった。

 人気だと聞いていたマッチングアプリは、運転免許証を示して簡単に登録できた。3カ月プランで、費用は1万円ほど。「居住地」「年齢」「身長」「職種」「お酒を飲む」など、様々な条件で相手を絞り込むことができる。表示された相手に「いいね」を押すと、「気になっている」という意思表示になり、相手が「いいね」を返してくれると、マッチングが成立。メッセージがやりとりできるようになる。

 居住地だけを「福岡県」と絞り込むと、目についたのが「あみ」。プロフィル写真の肌は色白で、髪の色はおとなしく、目は切れ長。年齢は4歳下らしい。

 「いいね」を送ると、すぐに反応があり、少し驚いた。

 「はじめまして」

 「休みの日は何をしてるんですか」

 「最近あついよね」

 数日やりとりをしていると、食事に誘われた。胸が高鳴った。

 気持ちを抑えられずに「電話したい」と伝えると、「電話はあんまり好きじゃないの」と断られた。

 5月26日午後5時、福岡市の繁華街・天神の待ち合わせスポットで約束した。今着いたよと電話すると、「後ろにいるよ!」。振り返ると女がいた。思っていたよりも派手なメイク。手にしているバッグはブランド品だった。

 連れられるまま、全国チェーンの居酒屋に入った。ビールで乾杯。女はその後、カクテルを6、7杯飲んだ。顔色はほとんど変わらなかった。

 女は唐揚げや焼き鳥を次々と食べながら、「看護師をしていて、月に50万~60万円稼いでいる」と話していた。どんな質問にも迷うことなく答え、自信に満ちあふれていた。生意気とさえ感じた。

 飲み始めて1時間が経ったころ。一人暮らしかと聞かれ、実家に住んでいると答える。それまで、こちらの話に「うん、うん」と相づちを打って耳を傾けてくれていた女は薄笑いを浮かべ、言った。

 「27歳で実家暮らしはヤバいよね」

 異性に「ヤバい」と指摘された恥ずかしさと、プライドを傷つけられた悔しさがないまぜになった。

 「私は18から一人暮らしよ。社会人なら一人暮らしが当たり前、なんで一人暮らししないの?」。そう畳みかけられ、さらに悔しくなった。

 以前、友人に誘われた投資で70万円を失い、お金のありがたさを知るためにも一度一人暮らしをした方がいいと、姉に勧められていた。女に、なぜかそんな話をした。

 すると、豪快に酒を飲んでいた女は「そうだったんだ、大変だったね」「私も昔、幼なじみから投資のことでだまされて、180万円持ち逃げされたことがあってさ。なんか私たち、同じような経験してるね」。

 さっきまでいけ好かなかった女が、急に優しく見えてきた。すると、続けた。「一人暮らしのサポートとか、投資の話とか、何でも聞いてくれる会社があるよ。その会社のおかげで私変われたよ。今度、私と一緒に話を聞きに行こっか」

 女はその場で誰かに電話を掛けようとした。止めようとしたが、女はこちらをまっすぐ見つめ、語気を強めた。

 「先延ばしにする必要なくない? 思ったらすぐに行動した方がいい」

 女は時々笑いながら、電話の相手と慣れた感じで話していた。途中、早口で日程を提示され、慌てて空いている日を答えてしまった。電話を切り、女は言った。「無料だし、安心して」。断りたかったが、相手の勢いに押されて、強く言えなかった。

突然求められた大金、戸惑っていると女は豹変した

 会計の時、女は財布を出すそぶりも見せなかった。暗くなった外へ出て、「2軒目は?」と聞くと、女は「用事あるから」と、帰ってしまった。

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