チャットGPTブームは1年?でも社会は変わる Re:で考えるAI

有料記事ネット世界とメディア 立ち止まって考える

構成・吉田貴文
[PR]

 ITアナリスト・小林啓倫さんへのインタビュー「AIがもたらすファスト社会 『時間をかけて考える』が生み出す価値」(5月24日配信)で、小林さんは「チャットGPTのような高度なAIが登場してきています。あなたはそのAIにどのような仕事を任せたいですか。そして浮いた時間でどのようなことをしたいですか」と問いかけました。記事に寄せられた声に小林さんが答えます。チャットGPT、AIをめぐる「Re:」。

 インタビューで小林さんは、メールやプレゼン用スライドの下書きや原案作成、簡単な顧客対応など新奇さが求められない仕事はAIに任せ、浮いた時間で人間は、対話などを通じて、時間をかけて考えることが必要だと言っています。そこで、期待されるのは「データ化されていない現実の掘り起こし」「これまで行われることのなかった知的活動」です。

本質的な変化は時間がかかる

 70代の男性はチャットGPTで浮いた時間に「本を読み、音楽を聴き、絵や写真や映画を見ます」と回答。そのうえで「人工知能の歴史を振り返れば、またブームが来たな、今度は何年持つかなというのが実感です。今回のブームの波長をどの程度に見積もっておられますか」と逆に問いかけます。

 小林さんの答えは……。

 【Re:】チャットGPTブームはあと1年ぐらいかなと思っています。ただ、ブームと本質的な変化とは区別するべきです。ブームは数年で終わりますが、本質的な変化はブームの後に来る。過去にもAIブームがありました。ワーッと盛り上がりいつしかしぼみましたが、ブームが終わった後も研究は続けられ、様々な技術が進化、社会に受け入れられました。

 今は2000年代から始まる第3次AIブームのさなかと言われます。1950~60年代の第1次、80年代の第2次ブームの時に誕生した技術が研究され、発展した結果、チャットGPTを生み出した現在のブームがあると言っていい。同じように、チャットGPTや生成AIというテクノロジーも時代をかけて着実に進化し、社会を変えていきます。

 ただ、人間が新たなテクノロジーを受け入れるのには、一定の時間がかかります。チャットGPTにしても、実際に仕事の中で使っている人は意外に少ないという調査結果もあります。AIを自在に操り猛スピードで仕事をする企業やビジネスモデルが一般的になるには、5年前後はかかるのではないでしょうか。

 チャットGPTで浮いた時間で何をするか。僕の場合、仕事では人間にしかできないこと。「データ化されていない現実の掘り起こし」や「これまで行われることのなかった知的活動」に費やしたい。プライベートでは、なかなか読めなかった本を読んだり、見られなかった映画を見たりするでしょう。

 実は、チャットGPTの基盤となるAIモデル「GPT-4」の学習データには小説なども使われていることを示す研究結果があります。J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』やジョージ・オーウェルの『1984』も読破しているらしい。僕は『1984』は読みましたが、『ハリー・ポッター』シリーズはまだだったので、読んでみようと思います。対抗するわけではないですが、機械が人間の作り出した名作を読み、人間が知らないというのは、本末転倒な気がするのです。

――――

 60代の男性は、対話などを通じて時間をかけて考えることが人間には必要という小林さんの意見に悲観的なコメントを寄せました。

 「『対話してゆっくり考える習慣』は多分、身につかないと思います。『ファスト情報』社会は、激辛のカレーやラーメンが刺激を求めて過熱するようなもの。胃を壊して初めて、後悔すると思います」

 【Re:】ファストとスローなものは両立します。

 食べ物のアナロジーで言えば…

この記事は有料記事です。残り1614文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

Re:Ron

Re:Ron

対話を通じて「論」を深め合う。論考やインタビューなど様々な言葉を通して世界を広げる。そんな場をRe:Ronはめざします。[もっと見る]

連載ネット世界とメディア 立ち止まって考える

この連載の一覧を見る