壊れていく地球に失望する若い人へ 89歳の女性科学者が伝える希望
気候変動、新型コロナ、ウクライナ戦争……。相次ぐ危機を前に、最も賢いはずの人間がたじろぎ、世界の若者が未来に希望を失っている。日本でも顕著だ。だが、霊長類研究から人と動物の境界のあいまいさを指摘し、自然と人間の危機に警鐘を鳴らしてきたジェーン・グドールさんは、90歳を前に、希望の大切さを語りかける。
――1960年、26歳で単身タンザニア・ゴンベの森に入り、チンパンジーの生態観察で数々の発見をしました。
「私が若いころは、『アフリカに行きたい』と言うと、みんな笑いました。『お金もない、大学も出ていない女の子が、どうやって』と。でも、母だけは『あきらめなければ絶対チャンスが来る』と励ましてくれたんです。人類学者のルイス・リーキー博士に出会い、チンパンジーの研究に誘ってもらったことで道が開けました」
「アフリカに行き、いまでは当然と思うかもしれませんが、人間以外の動物も知性や感情を持っていることを発見し、ケンブリッジ大学で博士号も取りました。アフリカの自然の中での暮らしは、人生で最高の夢のような日々でした。しかしそれは1986年に変わりました。森が破壊されてチンパンジーの個体数が急減していること、その周辺に暮らす人々が直面する問題を知ったからです」
「50代からは主に、環境や貧困、地域のために活動してきました。いまは1年のほとんどを、旅と講演活動に費やしています。ジェーン・グドール・インスティテュート(JGI)は、『人間』『動物』『環境』をテーマに活動しており、日本を含め30以上の国・地域に支部があります」
――世界を回っていて気になることがあるそうですね。
「希望を失った若者たちに大…