自衛隊の指揮系統、有事に米軍とどう連携 深まる議論、くすぶる懸念

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清宮涼=ワシントン 田嶋慶彦
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 有事の際に鍵を握るのが、明確な「指揮命令系統」だ。台湾有事への危機感が増す米国で、米軍の組織を見直し、日本と指揮系統の連携を深めるべきだとの議論が活発になっている。日本が自衛隊の指揮に特化した常設の「統合司令部」を設けると決めたことにも触発された動きだ。日本がどう主体的な判断をするのかも改めて問われる。

 日本は2022年末、「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有を決めた。自衛隊が守り、米軍が攻撃するという従来の日米同盟の「盾と矛」の関係が変わることになる。有事に日米で情報を共有して迅速に対応するため、米軍との間でより綿密な調整や責任分担の明確化が必要となる。

 連携の鍵を握るとみられるのが、陸海空自衛隊の一元的な指揮を目的とした「統合司令部」だ。22年末に決めた国家防衛戦略で新設を明記。24年度、防衛省がある東京・市谷に設置する方針だ。

 23年1月に米ワシントンで開かれた日米の外務・防衛担当閣僚による「日米安全保障協議委員会(2プラス2)」で、米側は日本の「統合司令部」設置の決定を歓迎した。共同発表文書で、日米は「相互運用性と即応性を高めるため、同盟におけるより効果的な指揮・統制関係を検討する」と確認した。

 ここで示された「指揮・統制関係」のありようについて、今後、日米間の議論が本格化する。米国防総省のライダー報道官は8月31日の記者会見で「現時点では米国の指揮系統に変更があるとは思っていない」と語った。ただ、米国の元政府高官らからは、日本の「統合司令部」の発足を前に、米軍も踏み込んだ議論を急ぐべきだとの声が上がる。

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この記事を書いた人
清宮涼
アメリカ総局
専門・関心分野
外交、安全保障、国際政治