増えた認知件数、減らぬ重大事態 いじめ防止法10年、早い対応課題

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狩野浩平
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 いじめ対策の枠組みを定めた「いじめ防止対策推進法」が施行され、28日で10年となる。国はいじめを見逃さぬよう全国の学校に積極的な認知を呼びかけ、認知件数は3倍以上に増えた。一方、被害者が心身に深刻な傷を負って「重大事態」と認定された事案のうち、事前にいじめと認知されていなかったのは4割超。法がめざす早期発見、早期対応は、いまなお大きな課題となっている。

 同法は、2011年に大津市立中2年の男子生徒がいじめを受け自殺した事件を機に、13年に超党派の議員立法で成立した。いじめを「児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義。悪質さや継続期間に関わらず広くいじめとして認知し、早期に発見、対応することで深刻化を防ぐことをめざし、関係者の責務、基本的な対策や調査の仕組みなどを定めた。

 積極的な認知を求める国の号令のもと、認知件数は激増。文部科学省の調査によると、同法が施行された13年度は18万5803件だったが、21年度は61万5351件で過去最多を更新した。

認知件数の増加、文科省「目が行き届いていることの証し」

 教育現場からは「定義が広すぎる」「一体何件まで膨れあがるのか」と戸惑う声もあった。しかし文科省は、積極的な認知は早期対応につながり、事態の深刻化を防げると強調。認知件数の増加について「教職員の目が行き届いていることの証し」と評価してきた。

 この間、認知件数とともに、法が定める「重大事態」の数も増えた。①生命、心身、財産に重大な被害が生じた②相当の期間欠席を余儀なくされた――疑いがある場合に認定される。13年度は179件だったが19年度は過去最多の723件。21年度も705件と高止まりしている。②の事案が増えただけでなく、①の事案も半数近くに上り、文科省は「憂慮している」とする。

 事態が深刻になるまでいじめとして対処できなかった事例も多い。21年度の重大事態705件のうち、重大な被害を把握する前にいじめとして認知できていなかったのは310件(44・0%)。このうち119件は、いじめに該当しうるトラブルなどの情報があったのにいじめとして認知していなかった。

 文科省児童生徒課は「早期発見・早期対応にはまだまだ課題がある。ネット上や学校外でのいじめも増えており、教員の意識に頼るだけでは限界がある」とする。

 同省は今年度から、全国の重…

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この記事を書いた人
狩野浩平
東京社会部|教育担当
専門・関心分野
いじめ、不登校、子どもの権利、ニューロダイバーシティー、幼児教育、性暴力