「てんかん」面接で伝えるべきか 職場で打ち明けにくい当事者の悩み
てんかん発作は、脳内の神経細胞が過剰に興奮することによって起こる。てんかんのある人は100人に1人とされ、頻度の高い病気として知られるが、職場などで周囲に打ち明けている人は少ない。10月はてんかんについて正しく知る「てんかん月間」だ。
今年3月、てんかんの啓発イベント「パープルデー大阪」で市民135人に「てんかんについて知っていましたか?」とアンケートをすると、10%が「初めて聞いた」と答えた一方、35%が「原因を知っている」と回答した。
「てんかんと周囲から打ち明けられたら?」と聞くと、18%が「印象が良くなる」、80%が「印象は変わらない」と答えた。近年は教育現場で、様々な国籍の子や病気のある子が一緒に学ぶ機会が増えている。アンケートを実施した大阪市立総合医療センターの温井めぐみ医長によると、「病気があることをオープンにする子も増えてきて、社会の環境が変わっているのではないか」と話す。
ただ、職場での理解に苦しむ人もいる。福岡市の後藤知佳さん(29)は、数種類の薬を使ってもてんかんの発作が完全には抑えられない。てんかんがあることを履歴書に書いたり、面接で伝えたりすると、すべて落ちた。てんかんを伝えずに入社しても、「ばれたら退職を求められるのではないか」と不安だった。
てんかんについて就職するときに伝えるべきなのか。東京都中央区の日本橋神経クリニックの久保田英幹院長は「数年発作が起きていない人や、頻繁に起きるけど発作時に意識がある人はあえて伝える必要はない。通勤途中や営業先で意識障害を伴う発作が起きる可能性があるなど、発作の病状と頻度に応じて伝えて欲しい」と話す。
言わないことが本人にとってもストレスとなることもある。久保田さんは「残業による睡眠不足やストレスは発作が起きやすくなる原因にもなるが、周囲の理解を得られないと孤立してしまう。一度信頼関係を作ったうえで伝えるのも一つの方法だ」と話す。