Re:世代論③ 在米ライター・竹田ダニエルさん
多様化が叫ばれる現代、好みや価値観における世代間の差が縮まっているとの調査が発表され、「価値観でつながろう」との声も上がる。「世代論」は必要なのか、どう向き合えばいいのか。今こそ「世代論」を問い直し、新たな形を探りたい。
ベビーブーマー、X世代、ミレニアルと、生まれた年に応じて定期的に世代が区切られている米国。物心がつくころからスマホに親しむ「Z世代」は日本にも“輸入”され脚光を浴びるが、米国ではその先、「iPadキッズ」世代も話題に。日米の世代論の違いとは――。1997年生まれの在米ライターとして、米国のZ世代について分析・発信する竹田ダニエルさんに聞いた。
――米国勢調査局が1946~64年生まれをベビーブーマーと名付けたのに続き、米国では十数年おきに世代が区切られていますね。
日本の「昭和生まれ」「平成生まれ」に近い感覚でとらえられていますね。米国では、それぞれの世代の傾向や歴史上の変化、社会的な文脈が具体例とともに分析されてきました。私もZ世代の一人として分析し、ツイッター(現X)で発信を始め、2020年春ごろからは記事も書くようになって、ちょうどその頃から「Z世代」という言葉が日本でも注目されるようになりました。
――今、米国のZ世代をどうとらえていますか。
シンプルに傾向として言えば、「貯蓄をして家を買ってリタイアする未来像が想像できない」と言う人が多いですね。
絶望する若者、「日本では想像できないほど多い」
ブーマーやX世代は、将来のために貯蓄して家を買うか、給料に見合った賃料で家を借りることができました。ところが今は物価は高いし金利も上がっているし、賃金も、多くの人にとっては正当に上がっている感覚がなく、家を持つことが希少価値になっています。家主はAirbnb(エアビーアンドビー、米民泊仲介大手)でもうけるようになって、長期の賃貸や条件の良い物件が出回りづらくなっています。
金利が高いから学生ローンも返せず、医療保険も高い。大学院を出ても就職は大変で、有名テック企業に勤めてもレイオフがある。一方ではビリオネアもいて、異様なまでの格差になっています。
今まで当たり前だった、「これぐらい貯蓄していれば」というのが全く通用しなくなっていて、ためたところで、パンデミックや地球温暖化、銃乱射事件で自分がいつ死ぬかもわからないという感覚が広がっています。米国はコロナの死者も多く、公共交通機関やレストラン、スーパーも人手不足。コロナが終わったら良くなると思っていたのに、根本的な社会基盤の機能不全がひどくなっている。「未来に対する希望もない」と絶望する若者が、日本では想像できないほど多いです。
そうしてZ世代は全体的に、今の資本主義や既存のシステムが機能せず、うまくいかなくなっているという価値観を持っています。
――米国のZ世代を日本で紹介してどんな反応がありましたか。
日本では「Z世代」という言葉に嫌悪感
日本では「Z世代」という言…