記者コラム「多事奏論」 編集委員・原真人
半世紀以上掲げてきた「経済大国ニッポン」の金看板をいよいよ下ろさなければならない時が来たようだ。昨年の国内総生産(GDP)ランキングで3位の日本が4位ドイツに抜かれることがほぼ確実になった。5位インドに抜かれるのも時間の問題で、「世界第3位の」という枕ことばはもう使えなくなりそうだ。
長らく経済大国を自負してきた日本人にとってこの精神的ダメージはけっして小さくない。中国に抜かれて3位に転落した2010年がそうだった。
それまで途上国として遇してきた中国に経済規模で後塵(こうじん)を拝したショックは、想像以上に大きかった。中国が次第に大国意識を隠さなくなったこともあって、日本人の対中感情は悪化。嫌中本が相次ぎ発刊され両国関係は悪循環に陥った。
日中逆転後のこのムードがその後発足した第2次安倍政権のアベノミクス登場を後押しした面もある。「日本を、取り戻す。」という安倍自民党の復古的キャッチフレーズが国民に受けたのも、2位から転落したショックの反動だろう。
とはいえ10年超に及んだアベノミクスの社会実験は失敗だった。高成長は実現せず、残されたのは巨大な政府債務と、機能不全の日本銀行という負の遺産だ。
GDPはもともと国民の福祉や豊かさを計測する手段ではなかった。1930年代後半に米国政府がGDPの原型を作ったのは大恐慌への対応と、それに続く第2次世界大戦への備えのためだった。
生みの親の経済学者クズネッ…
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