死刑執行の文書は「検証に不可欠」 元弁護人らが開示を求めて提訴

森下裕介
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 元死刑囚の死刑執行に関する行政文書を不開示としたのは不当だとして、元死刑囚の弁護人らが23日、国に不開示決定の取り消しなどを求めて大阪地裁に提訴した。「執行が適正に行われているかを検証するには文書開示は不可欠だ」と訴える。

 提訴したのは、2018年12月に死刑が執行された元暴力団幹部、岡本(旧姓・河村)啓三元死刑囚の弁護人やジャーナリスト

 訴状によると、弁護人らは昨年6月、元死刑囚計6人分の法相の命令書や決裁文書などを開示請求した。このうち、岡本元死刑囚やオウム真理教元代表の松本智津夫麻原彰晃)元死刑囚ら3人については、検察側から法相への「死刑執行上申書」や、執行後に拘置所が作成する「死刑執行速報」など一部の文書は開示された。だが、氏名欄や判決日などを除き、執行状況や本人の心情といった欄は黒塗りだった。一方、連続ピストル射殺事件の永山則夫元死刑囚ら3人は全ての文書が不開示となった。

 不開示の理由は「特定の個人を識別できる情報にあたる」「刑の執行や公共の安全に支障を及ぼす」などで、原告側は「抽象的だ」と批判。死刑が求刑される事件が裁判員裁判の対象となっている現状などを挙げ、「市民は執行状況や死刑囚の処遇を知る権利がある」と訴えている。

 岡本元死刑囚の再審請求で弁護人を務めた小田幸児弁護士は提訴後に記者会見し、「死刑制度を維持するならば、批判に耐えうる執行状況となっているのか、情報を公開した上で国民が考えるべきだ」と強調した。

 法務省は「訴状が届いていないためコメントできない」としている。

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この記事を書いた人
森下裕介
ネットワーク報道本部|地方裁判担当
専門・関心分野
司法、刑事政策、人権