能登半島地震で被災した石川県七尾市はいまも断水が続く。水がなければ、トイレも風呂も炊事もままならない。だが、市内のいくつかの避難所には発生3日後から、自治体の支援物資は送られない中、炊きたてのご飯が届けられた。その裏には全国の経営者たちの素早い連携があった。
避難所の一つ、七尾市立小丸山小には22日昼、約130人分のご飯が届いた。ビールケースより一回り大きい容器二つに入った、ゆげをたてるぴかぴかの白米。紙皿に盛られたそのご飯を、避難所に身を寄せる當波(となみ)鈴子さん(84)が口に運び、少しさみしそうに、笑った。
「あったかいですね」
家財が散乱した自宅にはとても住めない。一緒に避難した夫は持病があり、2日前に入院して離ればなれのままだ。
避難所で炊き出しを担当する道本昌樹さん(51)は「ここにも小さな炊飯釜はあるが、大勢のご飯を炊くのは大変。疲れも出てきている中、とても助かる」と受け取った。
市内の「和倉炊飯」がご飯を炊いた。地元スーパーや旅館にご飯を卸したり、学校給食に提供したりしている会社だ。
地震の翌日、仁八慶純(にはちけいじゅん)専務(57)は市内の自宅から出社し、もどかしい思いに駆られていた。
倉庫に積み重ねていた一つ30キロの米袋8千袋は崩れ落ち、高さ1・5メートル、重さ200キロほどの鉄の金庫は事務所の床に倒れていた。ただ、炊飯釜をはじめとする生産設備に目立った被害はなかった。電気も通っている。片付ければ、すぐにご飯が炊ける。でも、水道が出ない。
水さえあれば……。
SNSで情報収集していると、地元市議の投稿を見つけた。
「なんとか夕食のおにぎりを…