若年層の変化に「アイデンティティーのわな」の影 ヤシャ・モンク氏
米国の若者の間で、パレスチナを支持する動きが広まる背景に何があるのか。ポピュリズムの研究で知られ、近著では、人種やジェンダーなどのアイデンティティー(自己認識、自己同一性)を過度に重視する政治運動に警鐘を鳴らした政治学者のヤシャ・モンク氏に詳しく聞いた。
――なぜ、米国の若者にパレスチナへの支持が広がっているのですか。
「米国の世論調査全体をみると、若者を含め、イスラエル支持が強いのです。ただ、都市に住む、高学歴で左派的な若者を中心にパレスチナ支持が強く出ているのは事実です。いくつかの要因があるでしょう。例えば、歴史的な知識が不十分なため、中東の対立を単純にとらえてしまっている可能性があります。また、パレスチナ側で特に多く発生している民間人の被害への同情もあります」
連載 混迷を歩く アメリカ大統領選2024
米国のリーダーを選ぶ4年に1度の大統領選が、2024年11月に迫っています。国内外で難しい課題に直面し、混迷の淵でもがいているようにもみえる米国。記者が現場を歩いて大国の実像をとらえ、随時、報告します。
「そして、左派側の新しいイデオロギーが大きく影響していると考えています。この世界をとらえ、ほかの人と関わろうとする際、最も大切な要素が個人の人種やジェンダー、性的アイデンティティーであると考え、そのフィルターを通じて全ての事象を把握しようとする思考法です。こうした考え方を単純に中東に当てはめている例が見受けられます」
――そういう考え方はどのような形で具体化するのでしょうか。
「まず、世界を白人と有色の…
- 【視点】
ヤシャ・モンク氏は、人種やジェンダーなどを重視するアイデンティティ・ポリティクスがリベラルな基本的な価値観を壊すことを危惧しています。しかし、リベラルな価値観をいままさにぶっ壊しているのは、イスラエル寄りで完全停戦に消極的なアメリカ政府では
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