21年前、息子の姿に「嫌だ」と叫んだ 飲酒ひき逃げ遺族が願う未来

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上保晃平
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 雪がしんしんと降り積もる朝だった。21年前の2月12日午前6時、警察からの電話が鳴った。

 「タクちゃん、事故でけがしたみたい」

 北海道江別市の高石洋子さん(61)は、夫と中学2年だった長女と急いで自宅を出た。

 車で病院へ向かう途中、いつもの道は通行止めになっていて、規制線の向こうにぐにゃりと曲がった黒い自転車が見えた。

 「あれ、タクちゃんの」

 高石さんは、長女の声を「違うよ」と遮った。嫌な予感がしていた。

 高校1年で16歳だった拓那(たくな)さんは、人見知りもするけど、友達思いで明るい息子だった。中学でバレーボール部に入ってからは、一気に180センチまで身長が伸びていた。

 高校入学後には新聞配達のアルバイトを始めた。自分で携帯電話を買い、利用料金を支払うためだ。

 まだ空が暗く、誰も起きていないうちに自転車で出かけていく。あの日もそうだった。

   □   □

 車内に沈黙が流れたまま病院に着いた。「息子がけがをして運ばれてきたと聞いたんですけど」と尋ねると、処置室の前で待たされた。いつまで経っても案内されない。しびれを切らした夫が、勝手に室内へ入っていった。

 その瞬間、うめきとも悲鳴と…

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この記事を書いた人
上保晃平
北海道報道センター|事件・司法担当
専門・関心分野
人権、社会保障、障老病異