「世界中、どこでも見たことがない」という隆起による海岸の風景。そして、再び立ち上がろうとする人々の、変わらぬ力強さを見た。
世界に14座ある8千メートル峰のうち、13座に登頂し、山岳・極地や祭祀(さいし)儀礼などをテーマに作品を発表する写真家の石川直樹さん(46)。世界中を旅する中で、石川県珠洲市を10年前から撮影し続け、2021年に写真集「奥能登半島」を出版した。2月上旬、能登半島地震で被災した現地に初めて入り、旧知の人々に会った。
17年の奥能登国際芸術祭で、出品の誘いを受け、初めて訪れた。ライフワークとして撮影する来訪神行事に似た農耕儀礼「あえのこと」や夏のキリコ祭りで、人々の表情や色彩を追った。
珠洲の日常「100年後の誰か」へ
「珠洲の日常生活をきちんと撮っている物(写真作品)は、写真史にほぼない。意味はあるなと思い、7年間取り組みました」
授業中の高校生や街中の何げない風景、寒々しい冬の海岸も撮った。
石川さんは、常に記録性を意識して撮影している。
「100年後の誰かが、僕の写真から何らかの情報を引き出せるのが重要。地震前の記録として、撮っておいてよかったなと思っています」
会った人はみんな、これから何をどうしていくか具体的に話していた。だが、伝統行事は地震による中断で姿を変えるかも知れない。
「新しい違う文化が生まれるかも知れない。写真家は見ることが職業なので、生きている間見続けて、記録に残していきたいです」
石川さんは1月、写真ポスターを手売りし、義援金67万円を集めた。3月には新たなポスターを作り、義援金にあてるため販売を予定している。
記事後半では、能登半島地震が発生した時のこと、珠洲の文化や人々との関わり、能登半島の将来への思いなど、石川直樹さんがインタビューで語った詳しい内容の一問一答を読むことができます。
主な一問一答は次の通り…
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