北朝鮮インサイト⑧
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記は一昨年から、各地の視察に頻繁に「娘」を同行させています。韓国の情報機関は、後継者となる可能性ありとみて注視しているようです。金日成(キムイルソン)主席、金正日(キムジョンイル)総書記、金正恩氏と3代にわたり、北朝鮮の最高指導者を見つめてきた元公安調査庁の坂井隆さんの目にはどう映っているのでしょうか。今回の「北朝鮮インサイト」は、金正恩氏の「娘」にまつわるお話です。
北朝鮮ウォッチャー・坂井隆さん
1951年生まれ。78年に公安調査庁に入庁し、ひたすら北朝鮮をウォッチし続けてきた。2012年に退官後も独自に分析を進め、その手腕は専門家らの間でも高い評価を得ている。共著に「独裁国家・北朝鮮の実像」(17年、朝日新聞出版)など。
〈箱田〉坂井さん。金正恩氏がやたら娘を連れて歩いています。顔を見ると、確かに金正恩氏にそっくりですが、どういう人物なのでしょうか。
〈坂井〉名前や年齢、兄弟姉妹の有無などは諸説あるのですが、いずれも確認できていません。北朝鮮メディアに最初に登場したのは2022年11月、金正恩氏のミサイル試射視察に姿を現したときです。以来十数回、金正恩氏の動静報道の中で「娘」の同行を報じています。
【連載】北朝鮮インサイト
核・ミサイル開発に邁進し、日本にとってやっかいな隣国・北朝鮮。この国は実際どうなっているのか。40年以上にわたり、北朝鮮を分析してきた元公安調査庁幹部の坂井隆さんによる、プロフェッショナルの見方をお届けします。
〈箱田〉細心の注意を払っている周囲の対応をみても、やはり特別な存在なのでしょうね。
〈坂井〉一連の報道を通じて言えることは、「娘」がいかなる党・政府の高官よりもはるかに丁重な扱いを受けていること、また、そうした対応が少しずつ顕著になっていることです。「娘」が他の人々とはかけ離れた、金正恩氏に近い格別の地位に位置づけられていることがうかがえます。
たとえば2月8日に国防省を訪問したときです。金正恩氏と同様に歓迎の花束を受け取った後、立ち並ぶ軍高官一人ひとりから敬礼を受けたり、父と並んでレッドカーペットの上を歩いたりしました。記事の表現も以前は、金正恩氏が「愛するお子様とともにお出まし」と言った書きぶりだったのが、最近は「尊敬するお子様が同行された」など「娘」を主語にした書きぶりに変化してきています。
〈箱田〉坂井さんはさっきから「娘」としていますが、韓国などでは「ジュエ」という名前で呼ばれていますね。訪朝した米プロバスケットボールの元選手が、今から10年以上前に「娘がいて、名はジュエだ」と語ったことが根拠のようですが。
〈坂井〉おそらく当たってい…
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