量的緩和の後始末、悩む欧州 国債価格下落で損失拡大、政府穴埋めも

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ベルリン=寺西和男 神山純一
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 欧州の中央銀行が、国債などを買い入れて市場にお金を流す「量的緩和政策」の後始末に追われている。買い入れた国債の価格が下落するなどして損失を抱えているためだ。英国やスウェーデンでは損失を政府が穴埋めする事態になっている。今後、保有額を減らす「量的引き締め局面」に入る日本はどうなるのか。

スウェーデンの中央銀行のリクスバンクは4月、年内に437億スウェーデンクローナ(約6600億円)の資本増強を議会に求めた。損失の拡大で自己資本が減って、法律で求められた水準を割り込むおそれが出たためだ。現在、250億スウェーデンクローナの資本注入が検討されている。

 損失の主な理由は、量的緩和で買い入れた国債などの価格の下落だ。市場で取引される国債は、金利が下がれば価格は上がり、金利が上がると価格が下がる関係にある。インフレ対応で利上げを進めたところ、保有国債の価格が買い入れ時の価格を下回った。

 リクスバンクの広報担当者によると、2023年4月に市場で保有国債の売却を始めたことで損失が出た。さらに同行の会計ルールでは保有国債の価値を時価で評価し、価値の目減り分も「損失」として扱うため、自己資本が減ったという。テデーン総裁は、短期的な金融政策への影響は否定したうえで、「長期的に独立した金融政策への信頼を維持するため、財政的な独立が必要だ」と資本増強に理解を求めた。

 ただ、量的緩和自体に批判的…

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この記事を書いた人
寺西和男
ベルリン支局長
専門・関心分野
欧州の政治経済、金融、格差、ポピュリズム