「やまいだれ」は書けたけど…日本語学ぶスーダン難民、奪われた夢
「好きな文字があるんです」。日本から遠く離れたエジプトの首都カイロ。隣国スーダンから避難してきた人たちが身を寄せ合って暮らす地区にあるカフェで、彼女はペンを取った。勢いよく「やまいだれ」を書き、その中に「心」と書いたところで手が止まった。
「ああ、もう忘れてしまった。『癒やし』という言葉を書きたかったんだけど……」。シャファクさん(29)は苦笑し、日本語で「ダメですね」とつぶやいた。
昨年4月、スーダンの首都ハルツームなどで国軍と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)との武力衝突が始まってから、多くのスーダン人たちが家を追われている。
シャファクさんの自宅は国軍の拠点のすぐ近くだった。昨年4月15日の早朝、自宅から少し離れたところで、銃声が散発的に聞こえた。「すぐに収まるだろう」と思ったが、10分後にはかなり近くで銃声が響き始め、やがて撃ち合いは止まらなくなった。
家の玄関から最も遠い寝室のベッドの下に、両親と妹の4人で隠れた。床からは、断続的に放たれる砲撃の振動が伝わってきた。まもなく電気が消えた。「もう、ここにはいられない」
しかし、銃弾が飛び交う外に…
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