第1回「2人の子を」願う妻に言えなかった秘密 14歳で未来は奪われた

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遠藤隆史
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 「その日」のことは、いまもはっきりと覚えている。

 戦時中の1943年、北三郎さん(81、仮名)は仙台市で生まれた。生後8カ月で母を亡くした。戦地帰りの父と、再婚した継母に育てられた。

 父と継母の間に弟が生まれると、次第に自宅に居場所を感じられなくなった。生活が荒れて問題を起こすようになり、13歳で教護院(現在の児童自立支援施設)に入れられた。

 57年春。教護院の先生に「体にどこか悪いところがあるかもしれない」と言われた。連れて行かれたのは、産婦人科だった。

 「なんで産婦人科? 俺は関係ないんじゃないの?」

 先生に伝えたが、有無を言わせないまま医師のもとへと通された。手術台に寝かされると、なにも説明がないまま背中に注射を打たれ、すぐに意識を失った。

 目が覚めると、下腹部に激痛が走った。思わずのぞきこむと、睾丸(こうがん)に脱脂綿が巻かれていて、なにかの手術を受けたようだとわかった。

 どんな手術かを知ったのは、少し時間が経ってからだった。

 「お前がされたのは、子ども…

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この記事を書いた人
遠藤隆史
東京社会部|最高裁担当
専門・関心分野
司法、労働、福祉