第3回「虎に翼」の時代を駆けぬけた久米先生 まちがっていた? その真意
女性に参政権すらなかったころ、日本初の女性弁護士が3人同時に誕生した。
家庭裁判所の創設にも関わり、NHKの朝ドラ「虎に翼」の主人公のモデルとなった三淵嘉子。
東京から移り住んだ鳥取で希望を見いだし、「政治家の妻」としても駆け回った中田正子。
そして、もう1人が久米愛。なぜか「ソーダ水」にたとえられた。
どんな人物だったのか。教え子の1人が、今も神奈川で弁護士をしているという。
「明治大学を知らなければ、違う人生があったと思う」
横溝正子(88)は、鮮烈な出会いを今でも覚えている。
つばの浅い帽子をかぶり、学生の近くに置いたイスに足を組んで座る。色のついたスリップがスカートの下から見えることもあった。
和服姿の女性教員が多いなか、スーツを着た「久米先生」はあか抜けて見えた。
横溝は1954年、明治大学短期大学部法律科(当時)に入学し、英語の授業を久米から受けた。
小説の原文をもとに、英語から日本語への訳し方を教わった。忘れられないのは、英国人作家ジェイン・オースティンの代表作「高慢と偏見」(1813年)を教材にした日だ。
「法律は高慢な人や偏見のある人を許さない。公平で差別のない世の中のために法律がある」
作品の背景にある考え方を、久米は教えてくれた。高尚な中に、法律の魅力がつまっていた。
女性法律家をめぐる状況、自分が手がけた裁判、世界情勢……。いきいきと語る久米を前に、横溝は思った。
「自分もこんな生き方をしたい」
大阪で生まれ育った久米は…