第3回「素敵なボンジュール」を言えるよう 特訓された「ルペンの創造物」
外交官や政治家が居を構え、パリでもっとも洗練された高級住宅街16区。極右の流れをくむ右翼政党「国民連合(RN)」の本部は、この地区の一角にある。
調査報道を専門とするフリーのジャーナリスト、ピエールステファヌ・フォール(37)は昨年3月、ここで党首のジョルダン・バルデラ(28)に初めてインタビューをした。
専属の報道担当者に招かれて執務室に入ると、ソファでくつろぐバルデラがいた。ページをめくる本の表紙に見覚えがあった。左派系週刊誌の「マリアンヌ」。人権侵害が指摘されたカタールでのサッカーワールドカップをめぐる問題など、自分が何度か記事を書いた雑誌だ。
【連載】右翼の素顔 「脱悪魔化」の末
移民や貧困層の集まるパリ郊外の町で生まれ育ち、高校時代にはボランティアで移民にフランス語を教えていたジョルダン・バルデラ。排外的な右翼政党のイメージと相いれない若き党首に、一つの疑惑が持ち上がった。
人当たりの良い、自然な笑顔で迎えてくれたバルデラ。テレビではスーツ姿しか見たことがなかったが、目の前のバルデラはスニーカーにジーンズ、白いパーカを着ていた。政治ではなく「高校時代の思い出を語りだしそうな雰囲気」だった。
自分が仕事をした雑誌、親しみやすい服装。仲間意識を抱かせるかのような振る舞いに思った。「彼は相手によって自由に姿を変えられるカメレオンだ」。それがフォールが取材を終えて導き出した答えだった。
こんなエピソードもある。
バルデラは、党の実権を握る…