甲子園でも堂々と戦い抜いた 聖和学園の熱戦を振り返る
聖和学園は甲子園初勝利には届かなかったものの、初出場ながら堂々としたプレーを見せた。関西入りしてから試合までの約2週間、万全のコンディション管理で体調を崩す選手もおらず、力を出し切った。
13日の第2試合。聖和学園打線は、低めの変化球がさえた石橋の入江祥太投手(3年)を前に苦戦した。3度、三塁に進塁するも続かず、0―5で敗退。だが、選手たちはプレーの中でそれぞれの長所を生かしていた。
立ち上がりの一回表。3連続ショートへ打球が飛んだが、いずれも三浦広大主将(3年)が落ち着いてさばいた。その裏、1番打者の三浦主将は2球目を右安打とした。得点にはつながらなかったものの「プレーでチームを引っ張るタイプ」という三浦主将の持ち味が、初回から発揮されていた。
2番打者の中善寺健斗選手(3年)は、五回2死走者なしから左中間への安打を放つと、盗塁を決めた。2死からでも粘り、攻め続ける姿勢を崩さないというチームの強い姿勢を体現した。
宮城大会では「勝ちパターン」になっていた右横手の斎藤佑樹投手(3年)と長身右腕・千葉桜太投手(3年)の継投でこの日も臨んだ。「一心同体」(千葉投手)という二枚看板。相手打線に押し切られたものの、辛抱強いピッチングを見せた。
甲子園練習ではやや動きが硬かった内野陣も、この日は落ち着いた守備を見せた。相手校の大声援を浴び、連係プレーの声が聞こえづらい中、外野陣も普段通りの動きだった。八島知晴監督は「それぞれ適材適所で、全員で戦えた」とたたえた。
試合は大会7日目で、初戦の中で一番遅い日程となった。聖和学園は7月31日に関西入りしたため、試合まで約2週間の期間を慣れない環境で過ごした。八島監督は「この期間は調整ではなく、チーム力を上げる」と4日の抽選会後の取材に話していた。
「遠征でもこんな長い期間過ごすことはない」(八島監督)。チームは初の聖地で、試合に万全のコンディションで臨めるよう準備した。
始めの数日は、これまでの疲れをとる期間として、オフの時間をしっかり取り、ホテルで生活リズムを整えることを意識。後半からは実戦練習を積み重ねてきた。
試合では五回終了後のクーリングタイムで、アイススラリー(シャーベット状の飲料)が配布されることを念頭に、練習でもアイススラリーを摂取し、本番に備えた。
足がつらないよう、ミネラルを豊富に含むめかぶと納豆もホテルに用意してもらった。普段からミネラル補給として家庭でめかぶや納豆を食べるよう指導しているという。
さらに、朝の準備運動で生活リズムも整え、バスの長時間の移動で固まりがちな体をほぐした。
こうしたコンディション管理は、慣れない環境下でも実を結んだ。猛暑で体調に異変を訴える選手が多くいる中、聖和学園の選手は誰ひとり足をつらず、最後までアクシデントに見舞われず戦い抜いた。
全国の壁は確かに厚かった。だが、三浦主将は「この仲間たちと一緒に甲子園まで行って野球ができたのは、ずっとみんなで切磋琢磨して頑張ってきた結果。勝てなかったけど、それ以上に大切なものが見つかったかな」と試合後、少し潤んだ目で話した。
八島監督も「(宮城大会で)優勝してから、普通ならできないような経験をして、たくさんの人に支えられてきたので、選手たちも人間的な成長はあったんじゃないかな。甲子園に来ないと、こういった経験もできない」と振り返った。