消えるオレンジ畑、生産量15分の1に 「商品欠乏」へと向かう世界
商品(コモディティー)にあふれた世界から、商品欠乏の時代へ――。2020年代に入り加速する商品価格の高騰は、様々な事情が絡み合って供給が滞る世界経済の姿を映し出す。
フロリダを襲う病害とハリケーン
温暖な気候に恵まれ、オレンジの生産地として知られる米南部フロリダ州セブリング。平坦(へいたん)な土地に、高さ数メートルのオレンジの木が立ち並ぶ。ただ、ところどころ枯れた木や、葉が黄に変色した木が目立つ。
病害が蔓延(まんえん)しているのだ。2005年にフロリダで初めて見つかった「カンキツグリーニング病」は、感染すると葉が黄色になる。実の収穫量が減り、品質も悪くなる。効果の高い治療法は見つかっていない。フロリダのほとんどのオレンジの木が感染したとされる。
そこに、頻発するハリケーンや、ロシアのウクライナ侵攻の影響による肥料代の値上がり、収穫時に雇う人件費の上昇などが重なり、農園の経営は悪化した。
近くで農園を営むトレバー・マーフィーさん(36)は「フロリダのオレンジ農家はどこも経済的に困難な時間を過ごしている」と話し、ある土地を指さした。「あそこはオレンジ農園だったが、最近、開発業者に売られた。移住者向けの住宅が建つ予定だ」。マーフィーさんが指さす先には、オレンジの木に囲まれた中にぽっかりと、数百メートル四方の更地が広がっている。
マーフィーさんは「病害やハ…