収入「10億円増」が無効に? 万博の島で繰り返される地価算定
来春の大阪・関西万博の開幕に合わせて会場近くに新設される変電所の建設用地(大阪市此花区)をめぐり、異例の事態が続いている。所有する市は2023年度中に事業者に売る方針だったが、いまだ契約に至らず、1年をかけて決めた売却額を再設定する方向になった。何が起きているのか。
「工事は予定通り」の一方で
万博会場は大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)。ごみの最終処分場やコンテナターミナルとして活用されてきた埋め立て地で、電力インフラが整っていない。
そのため、関西電力子会社の関西電力送配電は、万博(25年4~10月)や閉幕後の跡地開発、カジノを含む統合型リゾート(IR)の開業(30年秋ごろ)などを見据え、島全域の電力供給を担う変電所の新設を決めた。同社は「万博の開幕に間に合うよう、工事は予定通り順調に進んでいる」としている。
建設用地は約5500平方メートルの市有地。管理する大阪港湾局は23年度中の売却を目指し、23年4月に売却額の算定を不動産鑑定業者に委託。その結果を同6月、市の諮問機関・不動産評価審議会に諮った。
市では入札などの価格競争を経ずに売却額を決める際、地方自治法に照らして金額が「適正」かどうかを、契約に進む前に審議会でチェックする運用になっている。
順当に手続きが進むはずだったが、ここから紆余(うよ)曲折が始まる。
鑑定評価、1年間に5業者で3回も
諮問価格は非公表だが、関係者らによると、1平方メートルあたり約15万円。西側のIR用地(約49ヘクタール)の評価額(1平方メートルあたり12万円)をやや上回り、計算上は建設用地全体で8億円超になる。
だが、算定方法などについて審議会の委員ら(第三者の不動産鑑定士5人、弁護士1人、公認会計士1人、近畿財務局職員1人)から疑問や異論が相次ぎ、答申を保留する異例の判断が示された。別の算定方法などを試みれば、より高い金額が出せるはずだと考えたとみられる。
市への情報公開請求で開示された文書などによると、港湾局はその後、23年7月に別業者に算定を委託したが、再諮問に至らなかった。前回の審議会の内容を踏まえ、委員らを納得させられる結果が得られなかったとみられる。
24年2月には、3回目の算定をさらに別の3業者に同時に委託。複数業者一斉の鑑定評価は、19年度のIR用地の賃料算定(4業者)などの前例があるが、これも異例のことだった。
ともあれ港湾局は同4月、「3者鑑定」の結果を踏まえ、10カ月ぶりに再諮問に臨んだ。
夢洲の市有地をめぐる異例の出来事はまだ続きます。記事の後半では、「非公表の再諮問価格」「売却額が無効化した出来事」「売却額の値引きの可否」について独自取材で明らかにします。
■専門家「そもそもカジノ用地…
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