ノーベル生理学・医学賞に米の2氏 遺伝子制御に関わるRNA発見

野口憲太 土肥修一
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 スウェーデンカロリンスカ研究所は7日、今年のノーベル生理学・医学賞を米マサチューセッツ大のビクター・アンブロス氏と米ハーバード大のゲイリー・ラブカン氏に贈ると発表した。両氏は、それまで知られていなかったごく短い「マイクロRNA」という分子が遺伝子を制御する仕組みを解明した。

 授賞理由は「マイクロRNAの発見と転写後の遺伝子制御におけるその役割」。マイクロRNAが正常に働かないと、先天性の難聴や骨格障害、がんなどに関係することが明らかになっている。

 生き物の遺伝情報は細胞の核にあるDNAに書き込まれている。必要な部分の情報がメッセンジャーRNA(mRNA)に写し取られ、それをもとにたんぱく質がつくられる。

 人体には何十兆個もの細胞があり、どの細胞もDNAの遺伝情報は基本的には同じだ。だが、DNAから写し取られる部分が細胞ごとに異なるので、筋肉や神経といった組織や臓器の違いが生じている。

 この仕組みは1960年代に盛んに研究され、遺伝子制御の主な原理は解明されたと長く考えられてきた。

 だが、アンブロス氏とラブカン氏は、たんぱく質がつくられる過程を制御する新たな仕組みを発見し、科学界に驚きを与えた。

 両氏は、体長1ミリほどの線虫をつかった実験で、成長過程で異常を示す個体に着目し、mRNAとは異なる非常に短いマイクロRNAがあることを突き止めた。マイクロRNAが特定のmRNAにくっつくと、たんぱく質がつくられなくなることがわかり、93年に論文で発表した。

 ヒトでは千種類を超えるマイクロRNAが見つかり、病気との関係でも注目されている。

 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5700万円)で、両氏で分ける。

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