大江小・中学校に「朝の読書大賞」 学校司書と教員が協力

滝川直広
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 京都府福知山市の大江学園(市立大江小学校・大江中学校)が今年度の「第17回高橋松之助記念朝の読書大賞」に決まった。朝の10分間読書を約20年続けていることに加え、学校司書と教員が協力して、さまざまな読書推進活動をしている点が評価された。昨年度は文部科学相から「子供の読書活動優秀実践校」として表彰され、2年連続の吉報だ。

 賞は、公益財団法人高橋松之助記念顕彰財団が顕彰する。府内では6年前に京丹後市の久美浜高校(現丹後緑風高校久美浜学舎)が受賞した。

 今回、賞に応募したのは中学校の国語科教諭、大槻裕彦さん(59)だ。今春、異動してきたとき、「こんなに子どもが本を読む学校はない。読書が文化として根付いている」と驚いたという。

 朝の10分間読書は午前8時半からだが、多くの子どもが5分前ぐらいから読み始める。昨年度の総貸出冊数は約1万4千冊。今年度は、すでに9月で1万冊を超えた。

 読書が根付いたのは、学校司書の中井直美さん(56)の力が大きい。毎年4月に読書オリエンテーションを実施し、低学年には読み聞かせをしながら本を紹介する。中学生には毎週ランチタイムトークをし、授業で取り上げる人物や季節にまつわる本を伝えている。

 読書週間などのキャンペーンも開く。本を借りに来た子どもにくじをひかせ、そこに書いてある数字と同じ冊数を借りられるようにした。くじには、借りなければならないテーマも書き、読書の幅を広げる。小学校の教諭から「子どもたちが伝記を読まない」と相談され、この方法を考えた。

 大江学園は2021年、大江町の三つの小学校を統合し、大江中学校との小中一貫校としてスタートした。統合前まで中井さんは四つの小中学校を巡回勤務し、各校には週1回程度しか行けなかった。統合後は大江学園だけの勤務になり、腰を据えて読書推進に取り組めるようになった。

 統合時、バーコードを利用した貸し出しシステムが導入された。入学すると、子どもたちはバーコードの付いた図書貸し出し用のカードを渡される。バーコードリーダーを当てれば10秒程度で本が借りられる。

 中井さんは「子どもたちは、このカードをもらうのがうれしいようです。昼休みの初めに本を借りれば、遊ぶ時間も十分にあります」と話す。

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 学校司書は学校図書館の運営を担う専門職員だ。2014年に学校図書館法が改正され、学校司書を置くことが努力義務とされた。ただ、20年度の文部科学省の調査では、全国の公立の小学校も中学校も、3割の学校で学校司書がいない。

 福知山市には市立の小学校14校、中学校9校があるが、学校司書は7人だけ。全員が会計年度任用職員で、複数校を掛け持ちしている。

 全国学校図書館協議会(事務局・東京)が昨年度、全国1741の市区町村教育委員会にアンケートしたところ、1044件の回答中、フルタイムの正規雇用の学校司書は6件しかない。637件が会計年度任用職員を含む臨時採用や嘱託採用だった。正規と臨時・嘱託の両者を採用しているという回答は30件あった。

 府内で回答した10自治体では、京都、福知山、長岡京の3市と大山崎、久御山、精華、京丹波の4町が臨時や嘱託と答えた。残りの3自治体はこの項目への回答がなかった。

 臨時や嘱託雇用が多い背景として、特に地方では学校司書の希望者や人材が少なく、掛け持ちをしないと勤務が回らないことや、臨時や嘱託のほうが勤務時間に融通が利くと考える人がいることが挙げられる。

 文科省は22~26年度を対象とした第6次学校図書館図書整備等5カ年計画で、学校司書の配置充実をうたい、人件費を地方交付税措置している。ただ、一般財源での措置のため、必ずしも学校司書の人件費に回っていないと指摘されている。

 同協議会理事長の野口武悟(たけのり)・専修大教授(図書館学)は「自治体だけの判断に頼って学校司書を増やしていくのは難しく、国がもう一押しする必要がある。会計年度任用職員では、頑張っている学校司書が継続して活躍していく保証がない。安心して働ける環境づくりを早急に検討していくことが必要だ」と話している。

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