「新潮」×「文学界」編集長対談 “遅いメディア”の文芸誌が持つ力
出版不況といわれて久しく、雑誌の休刊が相次ぐ。いま、月刊文芸誌が果たす役割とは何か――。今年4月に、21年ぶりの交代で新編集長に就いた「新潮」(新潮社)の杉山達哉さんと、昨夏から「文学界」(文芸春秋)の編集長を務める浅井茉莉子さんに語り合ってもらった。
――「新潮」は1904年、「文学界」は33年創刊と、ともに伝統ある文芸誌です。守り続けたいもの、変えていきたいことは何でしょうか。
浅井 「文学界」は、2024年1月号から岡崎真理子さんを新たなアートディレクターに迎え、表紙をはじめとしたデザインを一新しました。文字の多い雑誌なので、あえてシンプルに。雑誌全体がひとつのアートになればうれしいという思いがあります。
杉山 「新潮」は今後も、小説と批評を中心とした作品主義の方針を続けます。文学に限らず、映画や演劇、アートも含めて広く同時代の表現を言葉で届けていきたい。
浅井 「文学界」は数年おきに編集長が替わりますし、いまは4人の編集者で作っているのでその時々のメンバーによって誌面は自然と変化していきます。
杉山 「新潮」も同規模です。変えようとしなくても、中にいる人のアイデンティティーが雑誌の方向性に大きく影響します。
浅井 関わる編集者が少ない良さでもあり、大変さでもありますね。
■「悪」すら我が身に引き寄せ…
- 【視点】
急流に流されずに抗って生きる力、自分の足の力で立つ方法を教えてくれるのが文芸ですよね。 こうした高い志をもって、文芸誌の社会的意味を語ることができる方が編集長になってくれてうれしいです。 料理でも、旅行でも、丁寧なものはなんでも時間がかかる
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