栃木知事選で2候補者にアンケート、LRT・経済政策で対象的な回答

重政紀元 山下龍一
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 17日投開票の栃木県知事選に向け、朝日新聞はいずれも無所属で立候補した現職の福田富一氏(71)=自民党県連・公明党県本部推薦=と、新顔針川佐久真氏(74)=共産党推薦、社民党県連合支持=の2人に政策アンケートをした。次世代型路面電車(LRT)や経済政策で対照的な回答になった。

 JR宇都宮駅の西側延伸が検討されているLRTについて、推進してきた福田氏は「県央地域の東西基幹交通軸」として必要性を強調。東武宇都宮線など交通結節点の機能強化を訴えた。針川氏は「住民合意が形成されないまま開業に至った」とこれまでの手順を批判し、延伸には住民投票が必要とした。

 力を入れる経済、産業政策では、福田氏は「持続的発展には半導体蓄電池産業など新たな成長産業が重要」として、関連企業の誘致を優先する姿勢を示した。針川氏は「大企業呼び込み型から地元中小企業、農林水産業を応援する地域循環型経済政策に転換」を強調し、「最低時給1500円以上」を目指すとした。

 47都道府県ランキングで毎年低迷する魅力度の向上策では、福田氏はイチゴや日光の寺社といったすぐれた地域資源のアピールの必要性を挙げた。針川氏は子育て支援策などの充実による住みやすい地域づくりでの対策を掲げた。

アンケートの質問と回答

 ●質問【LRT】LRTの今後と、JR宇都宮駅の西側延伸の是非をどう考えるか

 ●福田富一氏(71)

 LRTは県央地域の東西基幹公共交通軸であることから、今後その効果を県内に広く波及させるため、西側延伸に加え、JR宇都宮線や東武宇都宮線などとLRTが接続する交通結節機能の強化、路線バスなどの端末交通の充実など、市のまちづくりと連携した誰もが利用しやすい広域的な公共交通網を形成していくことが重要である。また、東側の整備効果による西側整備への県民の期待も多いことから、西側延伸は必要である。

 ●針川佐久真氏(74)

 LRTは宇都宮市民の民意をはかることなく住民合意が形成されないまま開業に至ったのが最大の問題点。西側延伸については、今度こそ住民投票による民意の反映が必要。県としては、LRT支援ではなく県全体の地域バス路線やデマンド交通、公共交通空白地域の住民の足の確保を支援していくべきだ。

 ●質問【経済政策】力を入れる経済、産業政策は

 ●福田富一氏(71)

 本県産業の持続的な発展に向けては、半導体・蓄電池産業などの新たな成長産業の集積などが重要であり、関連企業の誘致・定着の強化や技術開発・販路開拓の支援、人材の確保・育成などに取り組んでいくほか、製造業における女性の業務領域の拡大やキャリアアップを支援することで男女間賃金格差の解消を図る。また、スマート農業・林業の取り組みを加速化し、生産性の向上や経営力の強化を図り、稼げる農林水産業の取り組みを推進する。

 ●針川佐久真氏(74)

 大企業呼び込み型から地元中小企業、農林水産業を応援する地域循環型経済政策に転換する。中小企業の賃上げを支援し最低賃金時給1500円以上をめざす。商店街を応援し、住宅・店舗リフォーム助成制度を創設する。農産物の価格保障で食べていける農業にし、有機農業、家族農業を応援。栃木で農林業を始める若者を応援する。

 ●質問【魅力度アップ】栃木県の魅力度アップのための施策は

 ●福田富一氏(71)

 本県は、雄大な自然や生産量55年連続日本一の「いちご」をはじめとする豊富な農産物、世界遺産「日光の社寺」といった優れた歴史・文化など、多彩で魅力的な地域資源を有している。これら魅力の認知度向上を図るため、大阪・関西万博への出展や大規模イベントの誘致・開催に取り組むほか、特産品や旅行商品などの開発を支援し、県産品の商品力向上を図るなど、本県の魅力度向上に取り組んでいく。

 ●針川佐久真氏(74)

 首都圏に近い立地や観光、農畜産物の産地としての魅力を生かし「訪れて良し、住んで良し」を目指す。環境・景観を守り、観光・地場産業、農業、地域交通を充実させる。カーボンゼロと防災の街づくり、住民の福祉と教育の充実、ジェンダー平等と多様性尊重でだれもが住みやすい栃木県にする。若者の就労・就学、結婚・子育てを応援する施策を充実させる。

 ●質問【県内の自治体の発展】地域間格差の解消に向けどのような対策をとるか

 ●福田富一氏(71)

 少子高齢化や人口減少の急速な進行により、中山間地域を含む地方の衰退が課題となっているため、地域の特色を生かしながら新しい農産物ブランドの創出に取り組むほか、ニーズに応じた移住・定住施策を推進するなど地方創生に向けた地域づくり活動を支援する。また、一定の自治体が施策を進める場合には県も協議に参加し、速やかに応援する新たなルールを市町と検討するなど、市町村重視の県政運営に引き続き取り組んでいく。

 ●針川佐久真氏(74)

 地域の衰退・消滅につながりかねない「ネットワーク型コンパクトシティ」「小さな拠点」など国の地域再編政策に追随するのではなく、市町の輝く政策を積極的に支援し、住み慣れた地域で住み続けられるよう支援する。地域資源を生かした循環型地域経済で地域経済の活性化を応援する。地域路線バス、デマンドタクシーなど地域間格差がないよう県民の足を守る。

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