与党敗北も「2013年体制」は温存 木庭顕さんが語る政治と希望

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構成・大内悟史
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 衆院選で与党大敗、だが野党の政権奪取も見通せない。混迷する日本政治をどう見るか。集団によって追い詰められた個人を出発点とし、ギリシャ・ローマ以来の政治や法がよって立つ基盤を根底から論じてきた歴史学者の木庭顕(こばあきら)さんに聞いた。

歴史学者・木庭顕さん寄稿「現在の日本における政治成立の条件」

 木庭さんが朝日新聞に寄せた1万2千字余りの論考をもとに構成したインタビューです。寄稿ではトランプ氏を次期大統領に選んだ米国の状況などにも触れています。こちらのリンクからお読みいただけます。

 ――木庭さんは「世界」昨年10月号の論考「残骸の諸層位」で、戦後政治をたどった上で、批判的議論を通じて透明性ある決定を下すという本来の意味の政治が築かれかかったが、1970年代以降、その「仮普請」さえも崩す営為が積み重ねられ、ついには第2次安倍政権(「2013年体制」)下で政治構築の可能性が断ち切られた、と論じました。その体制は揺らいでいるのでは

 2013年体制の中核を成した保守政党内の特異な一徒党――特に「清和会」は政治資金面でも宗教勢力との結び付きでもやや突出している、そしてこの体制に外から食い込もうとする諸勢力――「改革」の周りに浮かんでは消える多くの政党やそれらを渡り歩いた結果与党内に入る人々、これら双方の間の手打ちと結託および利益山分けの回路〈基幹的循環経路〉が内在的な不安定のために多少とも弱体化してきていることは確かです。

 (国鉄の分割民営化に始まる)公共機能破壊と投機は80年代以来の基本線ですが、2013年体制も一面でこれを継承し、一方のウィングが社会保障、労働、教育といった公共機能を掠奪(りゃくだつ)して山分けするという荒っぽい部分を担いました。しかし中核徒党が(総結託による一極権力を背景にして従来型利益調整を飛び越え)直接掠奪に関与するだけに、当然生じるスキャンダルは中核徒党を直撃します。中核徒党は(従来型利益調整支持者からも一般世論からも)指弾されるようになりました。今回の総選挙の結果にもこのことが反映されています。にもかかわらず私は、2013年体制克服の突破口が開かれたとは全く考えていません。

 ――なぜでしょうか

 そもそも、基幹的循環経路と…

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この記事を書いた人
大内悟史
文化部|論壇・読書面担当
専門・関心分野
社会学、政治学、哲学、歴史、文学など