水道水のPFAS、兵庫県内最高値の西脇市 水源地特定も原因は不明

大久保直樹
[PR]

 発がん性が指摘される有機フッ素化合物(総称PFAS)を巡る国の水道水全国調査が11月公表された。過去5年間のもので、兵庫県内では2021年の西脇市の1リットルあたり100ナノグラム(国の暫定目標値の2倍)が最高値だった。その後は目標値を下回っているが、原因が判然としないPFASへの市の対応を取材した。

 国は20年4月、PFASの一部の種類について、水質管理目標設定項目に追加し、暫定目標値を定めた。ただし検査やその結果の公表などに法的な義務はない。

 西脇市では市内4カ所の浄水場で21年から毎年、水質検査を実施してきた。このうち上戸田浄水場(同市上戸田)では21年夏、100ナノグラムが検出された。

 市は、ほかの浄水場から上戸田浄水場への供給量を増やし、PFASの低減化に取り組んだ。22年は28ナノグラムに減少したが、23年に32ナノグラム、24年に38ナノグラムと増える傾向にあった。

 そこで市は今夏から上戸田浄水場が取水している全6カ所の水源地の水質を検査した。すると地下水を取水していた1カ所で、140ナノグラムが検出された。市は急きょ11月20日から、この水源地からの取水を取りやめた。ほか5カ所の水源地の値は5未満~26ナノグラムと低かった。

 12月2日、市議会の議員協議会で市が一連の事態について報告した。議員からはデータを公表していなかったことを疑問視する意見があがった。

 PFASを巡る検査や公表、暫定目標値について法的な拘束力はないが、市施設管理課の担当者は朝日新聞の取材に対し、「隠していたということではなく、窓口での閲覧など対応できる状態だった。ただホームページなどで公表することはしていなかった。今月3日からデータを掲載するようにした」と説明する。上戸田浄水場については年明けにあらためて水質検査し、結果を公表するという。

 現在、環境省がPFASの扱いを「暫定目標値」から検査や公表が義務づけられた「水質基準」に引き上げるべきか検討を進めている。同課担当者は「健康への影響や明確な指針、自治体の対応マニュアルなどを国に早く示してほしい」と話す。

 一方、なぜ高濃度のPFASが地下水から検出されたのか、原因はなお不明だ。同課担当者は「費用をかければ調べることはできるが、地下水の流れは複雑で調査しても判明するかは分からない」と難しさを指摘する。

 PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称。水や油をはじく特性があることから、フライパンのコーティングや衣類の防水加工、食品の包装紙、半導体製造、航空機用の泡消火剤などさまざまな用途で使われた。人の健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘され、一部は製造や輸入が原則禁止されている。

 これまで国内ではPFASを取り扱っていた化学工場や米軍基地、PFASが吸着した使用済み活性炭を保管していた資材置き場などの周辺地域から高濃度で検出されている。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
大久保直樹
神戸総局|東播地区担当
専門・関心分野
地方自治・過疎問題・原発・史跡などの文化財