夕暮れ時の那覇市内。8月に訪れた沖縄県庁や国際通りがある市中心部は慢性的な渋滞で、行き交う車はのろのろ運転を続けていた。
内閣府の調査では、平日の朝夕ラッシュ時、市内を走る車の時速は10・5キロ。東京23区内の13・9キロより遅く、那覇市の渋滞は全国ワーストクラスだ。
戦前の景色は違った。
沖縄本島東岸に面する現在の与那原町から那覇市内までの9・4キロ、9駅をつなぐ県営鉄道が「住民の足」だった。そのほか2路線を含む鉄道の年間旅客数は約330万人に上り、サトウキビを運ぶ役割も担った。那覇市内には、首里と市中心部を結ぶ路面電車が走っていた時期もあり、戦前の沖縄県には発達した鉄道網があった。
だが、沖縄戦で鉄道は破壊され、全国有数の車の混雑ぶりは今に続く。
そんな沖縄で、次世代型路面電車(LRT)による鉄道網復活の動きが活発化している。
【連載】路面電車新時代
車社会の発展とともに減っていった路面電車が再び注目を集めています。乗り物としての役割にとどまらず、様々な課題を解決し、まちを活気づけるカギと位置づける各地の取り組みを紹介し、その可能性を探ります。
「鉄路の復活は悲願」と町長
かつて県営鉄道の始発・終点…