「交通弱者」のためのバスなのに…乳幼児連れNG 実証実験に法の壁

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日比野容子
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 乳幼児連れの母親が町営バスを待っていた。

 「お客様、申し訳ない。6歳未満のお子さんはお乗せできないんです」「え、なんで?」

 バスは乳幼児連れの母親を置いて発車した――。

 こんなケースが子育て世代に人気の京都府大山崎町で起きている。運転手不足などにより、町内を走っていた阪急バスの全2系統が9月末で撤退した。その「空白」を解消しようと、町は10月から代替となる町営バスを運行する実証実験を始めたが、乳幼児連れの乗車を断らざるを得なくなっている。

 実験では介護予防施設の無料送迎に使っていた町営バス(運転手を含めて10人乗り)を活用。従前の送迎ルートに加え、阪急バスの廃止ルートをカバーする。運賃は無料、実験期間は来年3月末までの半年間だ。

 運行が始まってしばらくした頃、住民から役場に質問が寄せられた。「チャイルドシートなしで、小さな子を乗せてもよいのですか」

 道路交通法は、チャイルドシートを着用していない6歳未満の幼児を乗せて運転してはならないと定める。町が地元警察署に問い合わせると、現行の運行方法では道交法違反の疑いがあると指摘されてしまった。

 普通免許より高度な運転技能が要求される「2種免許」を持つ人が運転している通常の路線バスでは、道交法施行令によりチャイルドシートの着用義務は免除される。

 一方、大山崎町のように「交通空白地」となった自治体がバスを走らせる場合も、着用義務が免除される規定がある。ただし、バスは「有償」である必要がある。「自家用有償旅客運送」と呼ばれる制度だ。

 ところが、大山崎町は「無償」で走らせている。いったいなぜなのか。

 町の答えはこうだ…

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この記事を書いた人
日比野容子
京都総局
専門・関心分野
オーバーツーリズム、歴史文化、医療・介護、クラシック音楽、スキー、料理、欧州事情など