「帝国の手先」海底ケーブル、攻防激化 出遅れた日本…まだ「丸腰」

有料記事経済インサイド

田中奏子 奈良部健
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 SNSのやりとりや金融取引から軍事命令、国家の機密情報まで――。国際通信の99%が経由する海底ケーブルが、国際政治や安全保障の焦点に浮上している。海底ケーブルの保護に、日本政府も遅ればせながら乗り出した。

 爆発物探知犬やSPが配備される中、ブリンケン米国務長官は現れた。7月29日朝、日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)の翌日だった。

 東京都港区のNEC本社。視察の目的は明示されていないが、同社が製造する海底ケーブルだったとみられる。展示室の海底ケーブルの前で立ち止まり、森田隆之社長と言葉を交わした。

 視察後、ブリンケン氏は海底ケーブルについて触れた上で、NECをこう表現した。「トラステッド ベンダー(信頼できる取引先)」

 今回の視察は、「信頼できない国」に対して、日米の結びつきの強さを示すメッセージではないかとみられている。安全保障の専門家の間でも、象徴的な出来事と捉えられているという。

 海底ケーブルは海の底を通り、大陸間の通信をつないでいる。私たちのスマートフォンは無線で基地局とつながるが、そこから先、日本と世界をつなぐ通信の99%が、実は有線で成り立っている。ケーブルは細いもので直径約2センチ。世界に450本、総延長は約140万キロに及ぶ。残り1%の人工衛星通信より距離が短く、年々増え続ける膨大なデータ量を速く送受信できる。

 検索、動画、SNSも。そして、国家の機密情報や軍事命令も――。

大英帝国の覇権、支えた海底ケーブル

 海底ケーブルの歴史は、情報…

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