「家を出ない」母に言われた幼少期 無戸籍の男が無銭飲食をするまで
所持金は150円、3日間、何も食べていなかった。空腹に耐えかねて焼き肉店に入り、約7千円分の飲食をした――。無銭飲食をしたとして詐欺罪に問われた被告の男(57)。裁判では、出生後に親が出生届を出さなかったため「無戸籍」のまま複雑な人生を送ってきたことが明らかになった。
11月、東京地裁での初公判。ジャージー姿の被告は、東京都内の焼き肉店で6月にレモンサワーなど計7点7150円の代金を支払わなかったという起訴内容について、小さな声で「間違いありません」と認めた。
被告は無戸籍の状態でどのように暮らしてきたのか。裁判での供述や被告への取材などからたどる。
被告によると、宇都宮市に生まれ、母と2人でアパートで暮らしていた。母はいつも午後6時ごろに家を出て、帰るのは深夜1時過ぎ。酒のにおいを漂わせていた。
「金八先生」に感じた疑問
父の記憶はない。どんな人か、どこで何をしているのか。母は語らなかった。
学校には通わず、読み書きや足し算、引き算などは母が教えてくれた。1日のほとんどをテレビを見るなどして過ごした。同年代の子どもと遊ぶこともなかった。「家から出ない」「誰かが来たら静かにして、いないふりをする」。母にはそう言われていた。
母は暴力を振るうことも怒鳴…
- 【視点】
【日本の司法・法務行政はなぜ逮捕歴のある被告を無戸籍のまま放置してきたのか?】他人事のように「戸籍の取得は時間がかかるかもしれないが」と言ってしまう矢野裁判官のご発言に違和感が強いです。家庭裁判所での就籍許可があればこの被告は戸籍が作れます
…続きを読む