オスロの夜に思う、いまこの世界に欠けているもの 平和賞の願いとは

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藤原学思
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 オスロの夜に「ノーモア・ヒバクシャ」の声がこだました。12月10日のことだ。

 日本原水爆被害者団体協議会日本被団協)にこの日の昼、ノルウェーのオスロ市庁舎でノーベル平和賞が授与された。日本の受賞者は50年ぶりだ。

 ノーベル委員会によると、取材に登録した日本の記者は120人。朝日新聞も、私を含めて7人を派遣して歴史的な取材に当たった。

 オスロでは毎年、授賞式の後に「たいまつ行列」が実施される。やわらかい明かりと、暖かさが一帯を包む。今回は被爆者らが行列を先導し、市民が中心部の700メートルほどを練り歩いた。

 「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ」

 そんな叫びが空に響くなか、行列は被団協代表団の泊まるホテルに着く。2階のバルコニーから、代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(92)らタキシードを来た3人が姿を見せ、手を振る。

 行列の参加者には子どもも多かった。10歳の息子を連れてきたオスロ在住の女性は「互いの違いを理解し、協力し、武器がなくなった世界を、この子に見せてあげたい」と言った。

「誰よりも平和を望んでいる。だが…」

 まちは鮮やかに彩られている。もうすっかり、クリスマスモード。そんな中で、私が考えていたのは、この2024年だけで4回訪れたウクライナのことだった。

 突然の停電はあたり前。まち…

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