二つのカーストに分断された米社会 自滅したリベラルの再生のカギは

有料記事トランプ再来 世界の視点

聞き手・石川智也
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コロンビア大学教授 マーク・リラ氏

 米大統領選で当選したトランプ氏は、ヒスパニックや若者、女性など従来の民主党の支持基盤でも支持を伸ばした。エリート主義に陥るリベラル派の自滅に警鐘を鳴らしてきた米政治哲学者のマーク・リラさんは、米国は左右というより上下に分断されていると語る。社会の亀裂は埋められるのだろうか。

2種類の「米国人」がいる

 ――大統領選で、米国の分断がまたもあらわになりました。

 「今日の米国は、文化的に互いを認めない二つの『カースト』が存在する国になりつつあります。かつて米国人と言えば、大統領を含めて似た嗜好(しこう)を持っていました。同じものを食べ、同じテレビ番組を見て、同じように子どもを育て、教会に通い、同じジョークで笑っていた。でもそれは大きく変わりました。娯楽の楽しみ方も、ユーモアのセンスも」

 「特に、身体的・経済的な健康管理のあり方は象徴的です。今日、米国には2種類の体つきの人がいます。つまり、一般的に太り気味でしばしば肥満の労働者階級と、健康で食にこだわりエクササイズと医者通いを欠かさぬエリート階級です」

 「かつては労働者階級からエリート階級に上るための『はしご』がたくさんありました。高待遇の肉体労働の仕事があり、子どもたちのための良い学校があり、賃金を守る労働組合があった。しかし今では、はしごはたったひとつしかありません。大学に入るか、入らないかのどちらかで、20代になる前に一生が決まってしまうのです」

 ――教育が社会を二つのカーストに分ける最も重要な要素になっていると?

 「そうです。今日、米国における文化的格差は、地理的な要因ではなく、教育によるものです。今や労働者階級から抜け出すためには大学教育が必須ですが、3分の1の人はその恩恵を受けられていません」

 「この格差がもたらす結果は…

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この記事を書いた人
石川智也
オピニオン編集部
専門・関心分野
リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論
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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2025年1月9日8時0分 投稿
    【視点】

    経済的にはきわめて「エリート」であるはずの超富裕なトランプやマスクが、正義も倫理もかなぐりすてた剝き出しの排斥や攻撃、デマなどの言動によっていわゆる「リベラルエリート」とは一線を画し、鬱屈と生活苦を募らせる「労働者階級」からの支持を得てしま

    …続きを読む
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    綿野恵太
    (文筆家)
    2025年1月9日12時56分 投稿
    【視点】

    アイデンティティ政治が流行すると、マジョリティ側もアイデンティティポリティクスを対抗的に組織するようになる。多数派が有利な選挙戦では、数も多いし、力を持っているマジョリティ側がそもそも有利になってしまうジレンマがあります。  そのうえ、ア

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