第5回個人情報ネットに公開、救助進んだ 虚偽あふれるSNS時代の災害で

有料記事ネットと災害 「つながる技術」は命を救うか

赤田康和 飯島健太 椎木慎太郎
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 能登半島地震が起きた2024年元日、X(旧ツイッター)にこんな投稿がされた。

 「旦那が足を挟まれて出られません。119繫(つな)がりません。充電もあと6%しかありません。旦那の呼吸ありません」

 石川県輪島市の住所が番地まで書かれていて、そこには瓦職人の木戸雅彦(47)一家が住んでいた。投稿内容は事実無根で、投稿者は木戸や家族ではなく、未知の第三者だった。

 「ウソの投稿で本来の捜索が遅れ、助かるはずの命が失われたかもしれない」と木戸は憤る。実際、救助関係者が木戸の家に駆けつけていた。

 この投稿をしたとみられる埼玉県の会社員の男性(25)は石川県警に偽計業務妨害の疑いで逮捕され、「投稿に注目を集めたかった」と供述。輪島市との縁はなく、地図アプリで地名を調べて投稿したという。罰金20万円の略式命令を受けた。

【特集ページ】ネットと災害 30年史

1995年の阪神・淡路大震災から昨年の能登半島地震へ。進化したインターネットは命を救う役割を果たす一方、偽・誤情報を拡散させる弊害も生み出しました。30年間に起きた災害でのネット上のやりとりを追いながら考えます。

 能登半島地震ではXなどSNSに大量の偽情報が投稿された。Xには起業家イーロン・マスクによる買収の後、広告収入の一部を投稿者に還元するしくみが導入されており、表示回数(インプレッション)稼ぎを狙ったとみられる海外からの投稿も相次いだ。

 当時、そんな虚偽情報があふれたネット空間に自らの個人情報をさらし、被災者を支援した人物がいる。

 石川県珠洲市の会社役員、岩城慶太郎(47)。地震発生後、帰省先の東京で、パソコンとスマホで珠洲市の孤立集落の情報を集めていた。水や食料、ガソリンが不足する深刻な状況が、現地の友人らから次々と伝えられていたからだ。知り合いの石川県幹部からも孤立の場所と人数を教えて欲しいと要請されていた。

 Xには匿名で救助や支援の要請が投稿されていた。ただし、存在しない住所、無関係な建物の写真など、明らかな虚偽もあり、多くは信頼できなかった。一方、本当に助けを求めている情報が放置されれば、命が失われてしまう恐れもあった。

 「真偽を調べるには自ら身元を明かして実名で対話するしかない」

 そう決意し、生存率が急激に…

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この記事を書いた人
赤田康和
大阪社会部|災害担当
専門・関心分野
著作権法などの表現規制法制とコンテンツ流通、表現の自由
飯島健太
西部報道センター
専門・関心分野
イランを中心とした中東政治、国際政治、核問題、事件、災害
ネットと災害 30年史

ネットと災害 30年史

1995年の阪神・淡路大震災から去年の能登半島地震へ。進化したインターネットは命を救う役割を果たす一方、偽・誤情報を拡散させる弊害も生み出した。30年間に起きた災害を軸にネットの功罪を考える。[もっと見る]