心を守る「毛」を生やそう 東畑開人さん語る、素人の力

有料記事社会季評

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 私たちの心は、思われているよりもどうやら脆(もろ)く、いろんな助けが必要のようだ――。コロナ禍以前から、多くの人が気づき始めていたように思います。もしあなたの心がいま「調子が良くない」としたら、その心を支えていくためには、誰がどんな役割を果たせばよいのでしょうか。専門家に任せればいい? こういうときこそ家族や友人? 臨床心理士の東畑開人さんは「どちらかだけでは足りないし、危うい、と考えている」といいます。いま必要な「心の支え方」を考える東畑さんのコラムです。

朝日新聞ポッドキャストでも、東畑開人さんをゲストに迎えて考えを伺いました。聞き手はオピニオン編集部の高久潤記者です。

Apple Podcasts や Spotify ではポッドキャストを毎日配信中。音声プレーヤー右上にある「i」の右のボタン(購読)でリンクが表示されます。

コラム「社会季評」

 ささやかな政策を取り上げたい。巨大な国家からすると砂粒のような政策だ。だけど、そこには私たちの社会のあらゆるところで生じている苦悩が表れている。

 「心のサポーター養成事業」のことだ。今年度の予算規模は3千万円弱。厚生労働省の発表によれば、安心して暮らせる地域作りのために「メンタルヘルスやうつ病や不安など精神疾患への正しい知識と理解を持ち、メンタルへルスの問題を抱える家族や同僚等に対する、傾聴を中心とした支援者」を、10年で100万人養成するとのことだが、実際の中身は地域住民に2時間程度のメンタルヘルスの研修を受講してもらうくらいのことだから、正直素人に毛を生やす程度の話だ。だけど、侮っちゃいけない。このささやかな毛がきわめて貴重なのだ。

 メンタルヘルスケアというと専門家が特別なことをするイメージがあるかもしれない。だけど、本当の主役は素人だ。実際、私たちが心を病んだとき、最初に対応してくれ、そして最後まで付き合ってくれるのは、専門家ではなく、家族や友人、同僚などの素人たちではないか。

「専門知が世間知の限界を補い、世間知が専門知の暴走を制御する」とは? コラムの後半では、周囲の「素人たち」による支えと、臨床心理士や精神科医といったプロの知恵とが、せめぎ合うことの大切さについて書かれています。またポッドキャストでは、「そもそも心とは他人が支えたり、自分で鍛えたりできるようなものなのか」といったテーマについて、コラムの編集を担当した高久潤記者らが東畑さんに聞いていきます。

 たとえば、最近離婚した同僚…

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