「あけてはやく」孫からクリスマスの贈り物 あふれる思いににんまり

大蔦幸
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 まもなくクリスマス。みなさんはどんな思い出がありますか。

 福岡県久留米市の松浦忍さん(64)のもとに少し遅れて、孫から素敵なクリスマスプレゼントが届いた。今年2月のことだ。

 〈ばあば げんきですか。クリスマスプレゼントをあげましょう。ぜん(名前)のおこづかいで、ためた、たぶん400えんぐらいのおかねでかったからだいじにつかってクダサイ〉

 当時小学1年だった孫からだ。

 縦書きの便箋(びんせん)に書かれた手紙の上には、中身が見えないようにくるまれた置物のようなものが貼られていた。包装紙は、伸び縮みする穴の開いた緩衝材を使っていた。

 〈ばあばペンギンノかざりだよ。ひっかけてやぶってね〉

 右手で包みを破れるような工夫がしてあった。

 松浦さんは、2020年に脳梗塞(のうこうそく)で倒れ、左半身が不自由になった。右手しか使えないので、包装紙を開けるのも一苦労だ。

 孫は、ちゃんとわかっていて、開けやすいようにしてくれていた。

 〈あけて はやく はやく はやく どう?ぷれぜんとだよ あげるよ 〉

 松浦さんは「私がプレゼントを開けている様子まで想像して書いてくれたのがわかるほどの臨場感。すごくうれしくて」。

 孫は脳梗塞で倒れた時から、時折遊びに来ては、松浦さんのことを気遣ってくれた。

 階段を上るのを不安そうにしていると、「ばあば、ぜんが杖になるからね」。お菓子の袋を開けづらそうにしていると、「やろうか」。

 やってあげているという感じでもなく、自然な感じから、孫の思いやりが伝わってきた。

 左半身が不自由になって大変なことの方が多かったけれど、孫がそばにいてくれることが支えになって、リハビリもがんばれた。今では、杖がなくても歩けるまでに回復した。

 「ありがとね」。そんな思いも込めて、クリスマスになると、孫にプレゼントを贈ってきた。

 喜んでくれるのがうれしくて、何をあげるのか考えるのも楽しかった。

 今年も11月に入ると、大きなクリスマスツリーを出し、壁いっぱいにオーナメントを飾った。

 昔は自分で飾っていたが、脳梗塞になってからは、近くの友人が手伝ってくれている。

 毎年、一つずつ足してきた飾りを見ては、一つ一つの思い出に包まれる。

 「大変だけど、来年も再来年も飾りたい。クリスマスは、大人になってもやっぱり楽しみで特別な日。なぜでしょう。幸せな記憶がたくさんあるからかな」

 今は、4人の娘たちもそれぞれの場所で過ごしている。でも、またいつか、みんなで集まりたい。そんなことを願いながら、飾ってあるツリーと、飾ってある孫の手紙を眺めるのも幸せだ。

 お気に入りの手紙たちは、リビングの一番目に付くところに飾っている。暗記するほど読んだけれど、何回読んでもほほ笑んでしまう。

 〈ばあばへ またあそびにいくよ こんどはいろいろあそぼうね いつかいくからまっててね〉

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