東京・西光子さん〈核といのちを考える 遺す〉

聞き手・花房吾早子
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東京都目黒区(広島) 西光子さん(91) 主婦

 (1)原爆は一瞬で多くの人を殺害し、傷つけました。この69年間、忘れることができない当時の体験、光景は何でしょうか。

 建物疎開の勤労奉仕をしていた当時中学1年の弟が被爆の3日後に亡くなりました。顔がわからないほどやけどをし、両手の内側の皮膚が垂れ下がっていました。

 2日後、寝ていた弟が床の間から日本刀を取り上げて、「アメリカをやっつけてやるー」と叫んで振り回した。3日後の朝、「ジュースを飲みたい」と言うので、「明日の朝もらいに行ってあげるからね」と語りかけて足をなでました。だんだん冷たくなり、そばにいた祖母、母、私の名前を呼んで、「みんなありがとう」と言って息をひきとりました。

 (2)原爆は長い間、被爆者を苦しめ続けました。被爆してから現在まで、恐怖や不安、怒りを感じたことはなんですか。

 1950年2月、2人目の子を流産しました。胸に水がたまる肋膜炎(ろくまくえん)にもなりました。広島から上京したばかりでしたが、引っ越しの荷物を整理できず、横になっていました。当時は被爆の影響があるとは思っていませんでした。

 (3)原爆投下から69年がたとうとしていますが、核兵器はなくなりません。どう思われますか。次の世代を担う人たちにどんなことを伝えたいですか。

 無差別に人を殺していいわけがありません。核兵器は国際法で使用禁止、あるいは廃棄すべきです。次の世代も憲法9条を誇りに、世界の平和に貢献してほしい。

 (4)東日本大震災原発事故が起き、たくさんの人が放射能への不安を抱えて苦しんでいます。こうしたなか、原発を再び動かそうとすることをどう思われますか。

 日本は地震国。再び事故が起きないとは言い切れません。完全な事故対策などあるのでしょうか。孫と野球のナイターを見に行ったとき、スタンド全体が明るくて驚きました。「これじゃあ、原発いるわ」と思いました。私が子どもの頃は原発がなくても生活できました。あの時代に戻ってもいいのでは。

 (5)安倍晋三首相は自衛隊が海外の戦争に加われる国になることをめざしています。賛成ですか、反対ですか。理由も教えてください。

 反対。どんなことがあっても、武力行使は避けるべきです。安倍さんは他の考え方ができないのでしょうか。せっかくある憲法9条を大事に守ってほしい。戦争放棄=話し合いで平和貢献できるのではないでしょうか。自分の頭で考え、話し合いで解決できる力を養う教育が必要です。

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この記事を書いた人
花房吾早子
大阪社会部|平和・人権担当
専門・関心分野
原爆、核廃絶、ジェンダー、LGBTQ+