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第1回まじめに生きた、貯金は尽きた 46歳が手にした5円玉

有料記事ひきこもりのリアル「8050」リスク

川口敦子 江口悟 岡野翔
写真・図版
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 ひきこもり状態などの事情を抱える中年の子が、高齢の親に生活費を頼って同居する中で社会から孤立してしまう「8050(ハチマルゴーマル)問題」が注目されています。いま40代前後の世代には、就労でのつまずきが、ひきこもりのきっかけになった人も多いようです。就職氷河期を経験したある男性を取材しました。

 師走の風が身にしみた。1998年の仕事納めの夜。首都圏で暮らす男性(46)は、社から持ち出した私物を抱え、歩道橋の上から車の流れを見つめていた。

 男性が私立大を卒業した97年は就職氷河期のただ中。山一証券が破綻(はたん)した年だ。50社以上受けたが、筆記は通っても面接で落ちた。唯一内定をもらったシステム関連会社。入ってみると、今で言う「ブラック企業」だった。タイムカードには退出時間が正確に刻まれず、社員教育もままならなかった。求められる仕事がこなせず、月曜から金曜まで社に泊まり込むことも。社の業績も上がらず、2年目で解雇された。

 「どこでもだめだろうから鍛え直してやろうと思ったが、無理だわ」。当時の社長の言葉が消えない。

 再就職にも失敗し、引っ越しや什器(じゅうき)搬入などの日雇い派遣を繰り返した。電話一本で仕事は得られても、人間関係は築けなかった。あるとき、つま先に鉄板の入っている安全靴で同僚に蹴られた。歩けるようになるまで1カ月かかった。

 やがて派遣の仕事も紹介され…

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