第2回通学初日、バイク破壊され…ふすま閉じ30年 悔いた母
高齢の親と、ひきこもりなどの事情を抱えた中年の子が同居し、社会から孤立する「8050問題」のリスクを抱える家庭では、経済的な困窮が背景にあるケースもあります。「自分が死んだら、この子は……」。高知県で暮らす70代の母親は、40代の息子の先行きを案じています。
高知市内で待ち合わせた山本美香さん(75)は、「これを読んでください」と手紙を記者に手渡した。取材にあわせ、山本さんが自分の思いを便箋(びんせん)4枚にしたためてくれていた。
「非正規の子や職場の競争に落ちこぼれてしまった無職の子、心の病気を持っていながらも支援を求められないままにあっという間に高齢になってしまった子を抱える家族がひっそりと今日も生きているのです」
山本さんの長男(46)は20歳の頃から30年近く自宅にひきこもったままだ。いまも山本さんが年金などで面倒をみている。
山本さんによると、長男は小学校、中学校でいじめにあった。顔を腫らして帰ってきたり、友達に駄菓子を万引きするように命じられたり。「強くなるように」とボーイスカウトに通わせたこともあったが、いじめは無くならなかった。
長男は、中学卒業後に進んだ専修学校になじめず中退。改めて入った別の板金塗装の学校で「事件」が起きた。祖父に13万円で買ってもらったバイクで初めて通学した日。バイクが誰かに傷だらけにされ、動かなくなった。「もう行かない」。翌日から、自室にひきこもるようになった。
「『自己責任』では解決できない、複合的な問題でひきこもらざるを得ない各自の事情があることも社会にご理解を仰ぎたい昨今なのです」
息子とつかみあった母、そして
離婚した山本さんは、保険会社の外交員や料亭の仲居を掛け持ちした。食べていくことで頭はいっぱい。何度も息子を外に出そうと、つかみ合ったそうです。やがて、転機が訪れます。
山本さんは、長男が3歳の時…